研究課題
我々は免疫抑制受容体PirBを発見しこれがMHCをリガンドとして免疫疾患の発症を制御することなどを報告してきた。最近PirBが神経軸索伸長の抑制をも担い,神経系リガンドとして新たに三種のタンパク,Nogo,MAG,OMgpが報告された。よってこれらマルチリガンド(ML)は多様な免疫系の情報を,PirBを含めて二三の受容体に集約させるネットワークを構築すると想定され,我々は実際に免疫系にも上記の新リガンドが発現することを突き止めた。本研究はMLの視点から,PirBが担当するものと協調,あるいは独立に機能する複数の新しい免疫制御経路を探索しそれを同定することを目的として研究を行っている。平成25年度はNogo欠損マウスの表現型を解析し,PirB欠損,MHCI欠損との整合性を評価した。またヒト末梢血単核細胞中のとりわけB細胞に発現するPirBヒト相同分子である LILRBの発現解析,ならびに抗体産生に関わるプラズマブラストなどへの分化段階をこのLILRBの発現プロファイルなどから追跡できるか否かについて検討を加えた。その結果,Nogo欠損マウスではとりわけマクロファージのトル様受容体の制御にPirBとは独立にNogoによる調節システムが存在することが明らかとなり,現在その分子機構を解析中である。またヒト末梢血中のB細胞の解析においては,自己抗体産生の活性があると指摘されたCD19+CD20+CD27+CD43+のB細胞画分自体は同定されたものの,この表面マーカー的な性質は極めてメモリーB細胞に近似し,また抗体産生活性は有しないことが明らかとなり,マウスB1細胞様の集団とされた報告は正しくなく,メモリーB細胞と極めて近似した集団であると結論付けた。
2: おおむね順調に進展している
PirBのマルチリガンド(ML)的な性質を分子レベルで解明し,その応用としてヒト疾患につながる成果を得る目的の一連の過程において,当初の計画どおり順調に成果が得られていると考える。
最終年度である平成26年度は,明確かつ次期につながる成果を得て取りまとめるため,とりわけ注力する課題として,PirBのヒト相同分子であるLILRBの,B細胞をはじめとした白血球上での発現やMHCI,Nogo,さらには未知リガンドなどを生理学的,病理学的な側面から解析,同定することで自己免疫疾患患者の新規治療に結びつく技術開発を進め,自己免疫疾患の制御を目指す。現在,材料は準備できており,推進に滞ることはないと考える。
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PLOS ONE
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