研究課題/領域番号 |
24249017
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 泰生 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (80212265)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ストレス / シグナル伝達 / 生理学 / 癌 / 炎症 / イオンチャネル / レドックス / 活性酸素種 |
研究概要 |
炎症反応におけるTRPM2の好中球浸潤における役割を探究した。即ち、冠状動脈結刹後に血流を回復させるIschemia-repurfusion (I/R)処置を、TRPM2 KOマウスに施したところ、野生型マウスに比べ顕著に梗塞巣が縮小することが分かった。TRPM2が豊富に発現する好中球の浸潤も、TRPM2 KOマウスの梗塞巣で顕著に抑制していた。野生型及びTRPM2 KOマウスから単離した心臓への、TRPM2 KOマウスから単離した好中球の浸潤をex vivoの系で検討したところ、野生型マウスから単離した好中球のそれに比べ有意に抑えられていた。I/Rにより生じる心筋梗塞において好中球遊走に関与すると考えられている因子をCa2+測定法により比較検討したところ、ロイコトリエンB4(LB4)に対する受容体応答の減弱が、TRPM2 KO好中球でみられた。また、内皮細胞への接着の減弱もTRPM2 KO好中球でみられた。このように、LB4に誘導された好中球の血管への浸潤が開始する過程で、TRPM2を介したCa2+流入が接着を安定化することが示唆された。さらに、TRPM2は炎症を統合するInflammosomeの形成に枢要であることも示され、過去の知見と併せて考えると、炎症反応全般を増幅するという普遍的に重要な生理的意義を、TRPM2は有することが考えられる。以上のデータに加え、TRPM2とTRPM7の活性を制御する活性酸素種の産生と関連が深い、エネルギー変化を生体・細胞内で評価する手法の開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPM2に関する研究においては、虚血再環流モデルをTRPM2ノックアウトマウスに適用し、好中球の梗塞巣への遊走が障害の進展には重要であり、そこにおいては心組織からのロイコトリエンB4への遊走過程の中の好中球の血管壁への接着に、TRPM2の大きな関与があることを見つけて今回報告した。また、マクロファージの分化において、急性炎症に関与するM1と癌関連のTAMに関連するM2の間の出現バランスの決定に、TRPM2とSTAT3の間の相互作用の有無が重要であることを既に見出しており、次の大きなステップへの兆しがみられる。一方、TRPM7に関する研究においては、条件的ノックアウトマウスが完成しており、Tamxifen誘導性のCreマウスとのかけ合わせにより、少なくとも培養系を用いた上記M1/M2バランスへのTRPM7の寄与を明らかにする実験が可能になっている。
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今後の研究の推進方策 |
目的の達成に向けて、後半2年間を有効な成果が得られるものを優先させ、研究を進行させる。例えば、マクロファージ選択的発現Creマウスの導入を図り、TRPM7のマクロファージM1/M2バランスへのTRPM7の寄与をin vivoで明らかにする。また、好中球の遊走時の血管壁への接着過程におけるFAKキナーゼファミリーの役割なども、今までの知見等を総合すれば大きな成果を望めるものの一つであるので、少なくとも一定の期間は集中的に実験を遂行するつもりである。
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