研究概要 |
TRPM2とTRPM7の活性を制御する活性酸素種の産生と関連が深い、エネルギー変化を生体・細胞内で評価する手法の開発を行った。即ち、温度依存的に会合解離するcoiled-coil構造に着目し、サルモネラ由来のTrpAタンパク質のcoiled-coil構造にGFPをつなげた温度センサータンパク質tsGFPを作製した。tsGFPはcoiled-coilの会合解離による発色団芳香環の水酸基のプロトン解離平衡の変化が引き起こすsigmoidalな蛍光変化を37度C付近で示した。様々な細胞内局所への標的配列を付加したtsGFPを作製し、褐色脂肪細胞等における熱産生を可視化したところ、電気化学的勾配とATP産生の程度に相関してエネルギー産生が増加することが分かった。また、同一細胞内でのミトコンドリアのエネルギー産生における不均質性も明らかになった。本手法は、tsGFP遺伝子移入動物などの作製により、ミトコンドリア内で起こる活性酸素種の産生とエネルギー代謝の関係を明らかにする強力なツールとして期待できる(Kiyonaka et al., Nature Methods, 2013)。この成果に加え、TRPホモログ選択的にNOによるニトロシル化を引き起こし、チャネル活性化開口に導くNitrosamine化合物の開発にも成功した。本化合物は分子認識によりTRPA1チャネルタンパク質のN末端に結合し、transnitrosylationを介してNOをシステイン残基のsulfhydryl基に導入し、タンパク質の構造変化を引き起こすと考えられる。今後は、タンパク質の分子認識部分を置き換えることにより、他のTRPホモログの選択的モデュレーターの合成が可能になると考えられる(Kozai et al., Molecular Pharmacology, 2014)。
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