研究実績の概要 |
TRPM2に関しては順調に成果が得られている。例えば、敗血症(Sepsis)は、病原体によって引き起こされた非常に重篤な全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)であり、ショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至ることから、的確な治療指針の確立が必須であるが、今回、TRPM2 KOマウスを用いることにより、TRPM2が敗血症の発症に果たす役割を解明した。即ち、TRPM2は比較的早期にはproinflammatory cytokines/chemokinesや好中球遊走を強く誘導することにより症状を悪化させるが、その裏返しとしてより後期では感染防御の側面からから感染の進行を抑えることにより、敗血症のさらなる重篤化を抑えていることが明らかになった((Qian X, Numata T, et al. Anesthesiology 121, 336-351 (2014))。一方、redox感受性TRPチャネルの一つであるTRPV4に関しても想定外の興味深い成果が得られた。TRPV4のN末端のankyrin repeats構造はPIP2に結合することによりチャネル活性が抑制されており、IP3などがそれを競合的に除くことでチャネルを活性化けることが明らかとなった。これは、新たなankyrin repeats構造の作用様式だけでなく、TRPチャネルの新たな活性制御機構を明らかにした成果である(Takahashi N, et al. Nature Commun. 5, 4994 (2014))。ankyrin repeats構造にはCys残基が多く存在することから、今後は、PIP2感受性とredox感受性との相互作用を明らかにする必要がある。
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