研究課題
生殖細胞特異的な小分子RNAであるpiRNAの生合成機構を解析するため、生殖系列の幹細胞であるGS細胞(Germline Stem 細胞)を使った実験系をたちあげた。piRNA産生に必須な遺伝子であるMILI(mouse miwi like)の遺伝子を欠損するGS細胞を樹立した。その細胞と、さらにMILIを導入して作成したMILI回復細胞を比較することにより、GS細胞は、piRNA合成の前半において機能することが明らかになった。そのMILI回復細胞を用いることにより、MILIが結合してpiRNA産生に関与するタンパクがあるのではないかと考え、MILIと共免疫沈降するタンパクのマス解析をおこなった。そのなかから、GPAT2 glycerol-3-phosphate acyltransferase 2(GPAT2)というミトコンドリア外膜に存在するタンパクの機能解析をおこなった。GPAT2遺伝子をノックダウンしたGS細胞を作成したところ、piRNA産生が著しく低下したことから、GPAT2は、piRNA合成の初期段階において機能することが明らかになった。GPAT2は、リゾフォスファチヂン酸の生合成に必要な酵素であることから、次に、GPAT2の酵素活性がpiRNAの産生に必要かどうかの解析をおこなった。GPAT2遺伝子をノックダウンした後、酵素活性を欠損するGPAT2遺伝子を導入したところ、piRNAの産生が回復した。このことから、GPAT2の酵素活性はpiRNA合成に不要であること、おそらく、GPAT2が何らかの足場としてpiRNAの生合成に関与していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
研究業績の概要に記したとおり、piRNA合成に必須なタンパクを一つ同定し、その機能解析をおこなうことができた。
GS細胞におけるGPAT2の機能解析をおこなったので、今後は、GPAT2の生体内における機能を解析していく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
RNA
巻: 19 ページ: 803-810
10.1261/rna.038521.113.
Genome Res
巻: 23 ページ: 292-299
10.1101/gr.137224.112
FEBS J
巻: 279 ページ: 832-843
10.1111/j.1742-4658.2012.08474.x.
Biol Rep
巻: 86 ページ: 1-8
10.1095/biolreprod.111.095018.
Nature
巻: 486 ページ: 415-419
10.1038/nature11093