研究課題
基盤研究(A)
(1)ワクチン接種後のマラリア自然感染によるブースト効果の解析を行ったところ、ワクチン接種により抗体が2倍上昇したワクチン応答者においては感染防御効果が認められるとともに、ワクチン接種後のマラリア自然感染によって2回以上の複数感染は対照群に比べて70%減少していた。これはワクチン応答者においてはその後の自然感染により極めて高いワクチン免疫のブースト効果が得られるためであることが明らかとなった。また、一例ではあるが不顕性感染によるブースト効果が観察された。(2)標的エピトープの解析においては全てのサンプル数が1300個を超えるため、その解析には効率的かつ小容量による解析方法が必須である。マルチプレックスサスペンションアレイ法を採用することと決定し、SE36抗原を網羅する15本のペプチドそれぞれを15種類のビーズぞれぞれと結合させ、Luminex社のLuminex 200により検出する準備を進めている。(3)ワクチン応答者における出現マラリア原虫のSERA遺伝子解析を実施した。総数100を超えるサンプルの遺伝子解析を行った結果、現在までの解析ではBK-SE36マラリアワクチンに対する多型変異耐性株は出現していない。(4)ワクチン誘導抗体の抗原虫作用を解析するため、抗SERA抗体依存的な単球によるマラリア原虫増殖阻害効果の解析を実施中である。(5)自然免疫アジュバントを加えた第二世代BK-SE36/CpGワクチンの開発では、CpGのGMP生産、BK-SE36とCpG合剤のGLP試験を順調に終了し、問題となる副作用は観察されなかった(GLP)。大阪大学附属病院未来医療センターと共同で平成24年度に既に大阪大学附属病院の倫理審査を受け、また、PMDAの承認も得ている。First in Humanを平成25年7月に実施する計画であり、順調に準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は本研究課題の全体の8割を超える実験計画についてこれを実施することができた。特にワクチン接種後のマラリア自然感染によるブースト効果の解析では、ワクチン応答者では感染防御効果が認められるとともに、感染した被験者においても2度以上の複数回感染が大きく減少するという顕著な効果が認められた。この解析結果は貧困国であるアフリカ諸国においてBK-SE36マラリアワクチンの接種を毎年行う必要がなく、当初の2回接種のみでその効果が持続することを示唆しており、大きな発見と言える。また、日本人では100%の抗体陽転が観察されたのに対して、アフリカ人では6-10歳では抗体陽転者が多数いたが、それ以上の年齢群では極めて少なかった。この現象がHLADRB1ハプロタイプの違いに起因するものか、免疫不応答に起因するかを解析することはマラリアワクチンの実用化にあたっては重要なことである。当初の計画には入れていなかったが、被験者132名全員の遺伝子を解析した結果、ワクチン応答者と非応答者にHLADRB1ハプロタイプの差は認められなかった。これも大きな前進である。 他の座位についても解析を行うべく研究を進めている。
フォローアップ調査の結果、ワクチン接種により抗体が2倍上昇し、且つ抗体価が200ユニットを超えると、100%の感染防御効果が認められることが示された。この観察はマラリアワクチンの接種による免疫応答と抗体価上昇が重要であることを強く示唆している。BK-SE36マラリアワクチンは水酸化アルミニウムゲルを添加したものであるが、これに自然免疫アジュバントを加えてより高い抗体価上昇が期待されるBK-SE36/CpGワクチンの第I相臨床試験を本年の7月に予定している。その結果を見て、今後の臨床開発をどちらのワクチンで進めるか方針決定をする予定である。今後の臨床開発では、アフリカにおいてHigh Risk Population である0-5歳児を対象とした安全性・免疫原性試験(Phase Ib)であるが、Phase I/IIb臨床試験として実施する予定である。また、国内においてもマラリア流行地域への渡航者を対象としたPhase II/III臨床試験を計画する予定である。
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