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2012 年度 実績報告書

BK―SE36マラリアワクチン臨床試験の基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 24249024
研究種目

基盤研究(A)

研究機関大阪大学

研究代表者

堀井 俊宏  大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80142305)

研究分担者 有末 伸子  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00242339)
東岸 任弘  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20379093)
田辺 和裄  大阪大学, 微生物病研究所, 招へい教授 (40047410)
八木 正典  大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (60452463)
田井 久美子  大阪大学, 微生物病研究所, 教務職員 (00187907)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードマラリア / ワクチン / 臨床試験 / SERA / IGGサブクラス
研究概要

(1)ワクチン接種後のマラリア自然感染によるブースト効果の解析を行ったところ、ワクチン接種により抗体が2倍上昇したワクチン応答者においては感染防御効果が認められるとともに、ワクチン接種後のマラリア自然感染によって2回以上の複数感染は対照群に比べて70%減少していた。これはワクチン応答者においてはその後の自然感染により極めて高いワクチン免疫のブースト効果が得られるためであることが明らかとなった。また、一例ではあるが不顕性感染によるブースト効果が観察された。
(2)標的エピトープの解析においては全てのサンプル数が1300個を超えるため、その解析には効率的かつ小容量による解析方法が必須である。マルチプレックスサスペンションアレイ法を採用することと決定し、SE36抗原を網羅する15本のペプチドそれぞれを15種類のビーズぞれぞれと結合させ、Luminex社のLuminex 200により検出する準備を進めている。
(3)ワクチン応答者における出現マラリア原虫のSERA遺伝子解析を実施した。総数100を超えるサンプルの遺伝子解析を行った結果、現在までの解析ではBK-SE36マラリアワクチンに対する多型変異耐性株は出現していない。
(4)ワクチン誘導抗体の抗原虫作用を解析するため、抗SERA抗体依存的な単球によるマラリア原虫増殖阻害効果の解析を実施中である。
(5)自然免疫アジュバントを加えた第二世代BK-SE36/CpGワクチンの開発では、CpGのGMP生産、BK-SE36とCpG合剤のGLP試験を順調に終了し、問題となる副作用は観察されなかった(GLP)。大阪大学附属病院未来医療センターと共同で平成24年度に既に大阪大学附属病院の倫理審査を受け、また、PMDAの承認も得ている。First in Humanを平成25年7月に実施する計画であり、順調に準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は本研究課題の全体の8割を超える実験計画についてこれを実施することができた。特にワクチン接種後のマラリア自然感染によるブースト効果の解析では、ワクチン応答者では感染防御効果が認められるとともに、感染した被験者においても2度以上の複数回感染が大きく減少するという顕著な効果が認められた。
この解析結果は貧困国であるアフリカ諸国においてBK-SE36マラリアワクチンの接種を毎年行う必要がなく、当初の2回接種のみでその効果が持続することを示唆しており、大きな発見と言える。また、日本人では100%の抗体陽転が観察されたのに対して、アフリカ人では6-10歳では抗体陽転者が多数いたが、それ以上の年齢群では極めて少なかった。この現象がHLADRB1ハプロタイプの違いに起因するものか、免疫不応答に起因するかを解析することはマラリアワクチンの実用化にあたっては重要なことである。当初の計画には入れていなかったが、被験者132名全員の遺伝子を解析した結果、ワクチン応答者と非応答者にHLADRB1ハプロタイプの差は認められなかった。これも大きな前進である。 他の座位についても解析を行うべく研究を進めている。

今後の研究の推進方策

フォローアップ調査の結果、ワクチン接種により抗体が2倍上昇し、且つ抗体価が200ユニットを超えると、100%の感染防御効果が認められることが示された。この観察はマラリアワクチンの接種による免疫応答と抗体価上昇が重要であることを強く示唆している。BK-SE36マラリアワクチンは水酸化アルミニウムゲルを添加したものであるが、これに自然免疫アジュバントを加えてより高い抗体価上昇が期待されるBK-SE36/CpGワクチンの第I相臨床試験を本年の7月に予定している。その結果を見て、今後の臨床開発をどちらのワクチンで進めるか方針決定をする予定である。今後の臨床開発では、アフリカにおいてHigh Risk Population である0-5歳児を対象とした安全性・免疫原性試験(Phase Ib)であるが、Phase I/IIb臨床試験として実施する予定である。また、国内においてもマラリア流行地域への渡航者を対象としたPhase II/III臨床試験を計画する予定である。

  • 研究成果

    (28件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Association of naturally acquired IgG antibodies against Plasmodium falciparum serine repeat antigen-5 with reduced placental parasitemia and increased birth weight in pregnant Ugandan women: A pilot study.2013

    • 著者名/発表者名
      Owalla TJ, Palacpac NM, Shirai H, Horii T, Egwang TG.
    • 雑誌名

      Parasitol Int.

      巻: 62(3) ページ: 237-239

    • DOI

      S1383-5769(13)00010-X. 10.1016/j.parint.2013.01.006.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Within-population genetic diversity of Plasmodium falciparum vaccine candidate antigens reveals geographic distance from a Central sub-Saharan African origin.2013

    • 著者名/発表者名
      Tanabe K, Mita T, Palacpac NM, Arisue N, Tougan T, Kawai S, Jombart T, Kobayashi F, Horii T.
    • 雑誌名

      Vaccine

      巻: 31(9) ページ: 1334-1339

    • DOI

      S0264-410X(12)01824-5. 10.1016/j.vaccine.2012.12.039.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TLR9 adjuvants enhance immunogenicity and protective efficacy of the SE36/AHG malaria vaccine in nonhuman primate models.2013

    • 著者名/発表者名
      Tougan T, Aoshi T, Coban C, Katakai Y, Kai C, Yasutomi Y, Ishii KJ and Horii T
    • 雑誌名

      Human Vaccines & Immunotherapeutics. 2013 Jan 4;9(2): 283-290.

      巻: 9(2) ページ: 283-290

    • DOI

      10.4161/hv.22950

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lipocalin 2 bolsters innate and adaptive immune responses to blood-stage malaria infection by reinforcing host iron metabolism.2012

    • 著者名/発表者名
      Zhao H, Konishi A, Fujita Y, Yagi M, Ohata K, Aoshi T, Itagaki S, Sato S, Narita H, Abdelgelil NH, Inoue M, Culleton R, Kaneko O, Nakagawa A, Horii T, Akira S, Ishii KJ, Coban C.
    • 雑誌名

      Cell Host Microbe.

      巻: 12(5) ページ: 705-716

    • DOI

      10.1016/j.chom.2012.10.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The in silico screening and X-ray structure analysis of the inhibitor complex of Plasmodium falciparum orotidine 5'-monophosphate decarboxylase.2012

    • 著者名/発表者名
      Takashima Y, Mizohata E, Krungkrai SR, Fukunishi Y, Kinoshita T, Sakata T, Matsumura H, Krungkrai J, Horii T, Inoue T.
    • 雑誌名

      J Biochem.

      巻: 152(2) ページ: 133-138

    • DOI

      doi: 10.1093/jb/mvs070

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Plasmodium cynomolgi genome sequences provide insight into Plasmodium vivax and the monkey malaria clade2012

    • 著者名/発表者名
      S-I.Tachibana, et al.
    • 雑誌名

      Nature Genetics

      巻: 44(9) ページ: 1051-1055

    • DOI

      doi:10.1038/ng.2407

    • 査読あり
  • [学会発表] 抗SE36抗体の誘導とマラリア抵抗性に関与する遺伝的バックグラウンドの研究2013

    • 著者名/発表者名
      東岸任弘、ニリアン・Q・パラックパック、八木正典、中村昇太、後藤和義、トーマス・G・エグワン、堀井俊宏
    • 学会等名
      第82回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      東京都文京区/日本
    • 年月日
      20130329-20130331
  • [学会発表] マラリア原虫の抗原遺伝子seraの多型解析2013

    • 著者名/発表者名
      有末伸子、田邊和裄、Nirianne M. Q. Palacpac、堀井俊宏
    • 学会等名
      第82回寄生虫学会大会
    • 発表場所
      東京都文京区/日本
    • 年月日
      20130329-20130331
  • [学会発表] ウガンダにおけるマラリアワクチンBK-SE36第Ib相臨床試験での抗体応答とマラリア感染後のブースト効果についての解析2013

    • 著者名/発表者名
      八木正典、Nirianne M. Q. Palacpac、白井宏樹、有末伸子、板垣佐和子、東岸任弘、石井健、Thomas G. Egwang、堀井俊宏
    • 学会等名
      第82回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      東京都文京区/日本
    • 年月日
      20130329-20130331
  • [学会発表] 新規アジュバント添加による次世代SE36マラリアワクチンの開発と実用化:旅行者用ワクチンへのアプローチ2013

    • 著者名/発表者名
      東岸任弘、青枝大貴、Coban Cevayir、片貝祐子、甲斐知恵子、保富康宏、石井健、堀井俊宏
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市/日本
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] 抗SE36抗体の誘導とマラリア抵抗性に関与する遺伝的バックグラウンドの研究2013

    • 著者名/発表者名
      東岸任弘、Nirianne Q. Palacpac、八木正典、中村昇太、後藤和義、Thomas G. Egwang、堀井俊宏
    • 学会等名
      感染症若手フォーラム 2013
    • 発表場所
      北海道北広島市/日本
    • 年月日
      20130228-20130302
  • [学会発表] ウガンダにおけるマラリアワクチンBK-SE36第Ib相臨床試験での抗体応答と自然感染後のブースト効果についての解析2013

    • 著者名/発表者名
      八木正典、Nirianne M. Q. Palacpac、白井宏樹、有末伸子、板垣佐和子、東岸任弘、石井健、Thomas G. Egwang、堀井俊宏
    • 学会等名
      感染症若手フォーラム2013
    • 発表場所
      北海道北広島市/日本
    • 年月日
      20130228-20130302
  • [学会発表] The Phase 1b clinical trial in Uganda for the blood-stage malaria vaccine candidate BK-SE36.2013

    • 著者名/発表者名
      T. Horii, N.M.Q. Palacpac, A.Yeka, H.Shirai, E.Ntege, N.Suzuki B.Balikagala, T.Okada, T.Kohhei, S.Ueda, K.J.Ishii, T.G.Egwang
    • 学会等名
      アジア・アフリカリサーチフォーラム
    • 発表場所
      東京都文京区/日本
    • 年月日
      20130123-20130124
  • [学会発表] Immunogenicity of SE36 and boosting effect following infection in a clinical trial in Uganda2013

    • 著者名/発表者名
      Masanori Yagi, Nirianne Marie Q. Palacpac, Hiroki Shirai, Nobuko Arisue, Sawako Itagaki, Takahiro Tougan, Ken J. Ishii, Thomas Egwang, Toshihiro Horii
    • 学会等名
      アジア・アフリカリサーチフォーラム
    • 発表場所
      東京都文京区/日本
    • 年月日
      20130123-20130124
  • [学会発表] ウガンダで実施した BK-SE36 マラリアワクチン臨床試験における安全性と効果に ついて2012

    • 著者名/発表者名
      堀井俊宏
    • 学会等名
      第16回日本ワクチン学会学術集会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市/日本
    • 年月日
      20121117-20121118
  • [学会発表] Learning from interfacing studies on SE36: a candidate malaria vaccine that targets the Achilles’ heel antigen of Plasmodium falciparum.2012

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Horii and Thomas G. Egwang
    • 学会等名
      KEYSTONE SYMPOSIA, Immunological Mechanisum of Vaccine
    • 発表場所
      Otawa, Canada
    • 年月日
      20121113-20121118
  • [学会発表] アピコプラストゲノムに基づくヒトマラリア原虫の系統的位置の推測2012

    • 著者名/発表者名
      有末伸子、橋本哲男、川合 覚、田邊和裄、堀井俊宏
    • 学会等名
      第72回日本寄生虫学会東日本支部会/第10回分子寄生虫マラリアフォーラム
    • 発表場所
      群馬県前橋市/日本
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] ウガンダにおけるマラリアワクチンBK-SE36第Ib相臨床試験での抗体応答とマラリア感染後のブースト効果についての解析2012

    • 著者名/発表者名
      八木正典、Nirianne Marie Q. Palacpac、白井宏樹、有末伸子、板垣佐和子、東岸任弘、石井健、Thomas Egwang、堀井俊宏
    • 学会等名
      第72回日本寄生虫学会東日本支部会・第10回分子寄生虫マラリアフォーラム合同大会
    • 発表場所
      群馬県前橋市/日本
    • 年月日
      20121012-20121012
  • [学会発表] Absence of antigenic variation and limited polymorphism makes Plasmodium falciparum SERA5 a promising vaccine2012

    • 著者名/発表者名
      Nobuko Arisue, Nirianne M. Q. Palacpac, Kazuyuki Tanabe, Toshihiro Horii
    • 学会等名
      The 11th Awaji International Forum on Infection and Immunity
    • 発表場所
      兵庫県淡路市/日本
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] Immunogenicity of SE36 and boosting effect following infection in a clinical trial in Uganda2012

    • 著者名/発表者名
      M.Yagi, N.M.Q.Palacpac, E.Ntege, A.Yeka, B.Balikagala, N.Suzuki, H.Shirai, C.Nsereko, T.Okada, K.Tetsutani, N.Arisue, S.Itagaki, T.Tougan, K.J. .Ishii, S.Ueda, T.G. .Egwang, T.Horii
    • 学会等名
      第11回あわじしま感染症・免疫フォーラム
    • 発表場所
      兵庫県淡路市/日本
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] Safety and protection of BK-SE36 malaria vaccine in the phase 1B trial in Uganda2012

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Horii
    • 学会等名
      8TH WORLD CONGRESS ON VACCINES, IMMUNISATION AND IMMUNOTHERAPY, WCVII2012 Spain
    • 発表場所
      Barcelona, Spain
    • 年月日
      20120605-20120607
  • [学会発表] リスザルは1種類のIgGを持ち、サブクラスを持たない2012

    • 著者名/発表者名
      東岸任弘、中村昇太、朴辰幸、片貝祐子、保富康宏、立花太郎、堀井俊宏
    • 学会等名
      日本実験動物科学・技術・九州 2012
    • 発表場所
      大分県別府市/日本
    • 年月日
      20120524-20120526
  • [学会発表] リスザルは1種類のIgGを持ち、サブクラスを持たない2012

    • 著者名/発表者名
      東岸任弘、中村昇太、朴辰幸、片貝祐子、保富康宏、立花太郎、堀井俊宏
    • 学会等名
      NGS現場の会 第2回研究会
    • 発表場所
      大阪府吹田市/日本
    • 年月日
      20120524-20120525
  • [学会発表] Absence of antigenic variation and limited polymorphism makes Plasmodium falciparum SERA5 a promising vaccine. Nobuko Arisue2012

    • 著者名/発表者名
      Nobuko Arisue
    • 学会等名
      Forum Cheju 15,Current Trends in Parasitology Research in Japan and Korea
    • 発表場所
      宮崎県、青島市/日本
    • 年月日
      20120523-20120525
  • [学会発表] Squirrel monkey has a single IgG and no IgG subclasses2012

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Tougan, Shota Nakamura, Chin-Heng Paku, Yuko Katakai, Yasuhiro Yasutomi, Taro Tachibana and Toshihiro Horii
    • 学会等名
      5th International CVRDC-RIMD Joint Symposium
    • 発表場所
      済州島/韓国
    • 年月日
      20120510-20120512
  • [学会発表] マラリア原虫のアキレス腱を標的とするSE36 マラリアワクチン開発2012

    • 著者名/発表者名
      堀井俊宏
    • 学会等名
      第60回 日本化学療法学会学術集会/第86回日本感染症学会学術集会
    • 発表場所
      長崎県長崎市/日本
    • 年月日
      20120425-20120426
    • 招待講演
  • [備考] 大阪大学微生物病研究所

    • URL

      http://www.biken.osaka-u.ac.jp/index.html

  • [備考] 大阪大学微生物病研究所分子原虫学分野

    • URL

      http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/protozool/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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