研究課題
本研究は、亜鉛の生物学的意義について包括的な理解を目指すものである。亜鉛は必須微量元素の一つであるが、その生理活性メカニズムはよく分かっていない。「亜鉛シグナル」の概念は、申請者が発見したIL-6およびそのシグナル伝達系の生理機能を研究する過程で発見した現象であり、非常に独自性の高い研究テーマである。本申請では、亜鉛が細胞内のセカンドメッセンジャーとして機能する分子メカニズムを明らかにし、生体にとっての亜鉛の生理機能を解明することを目的とする。マスト細胞における亜鉛信号の解析:マスト細胞顆粒膜にあるZnt2欠損細胞では顆粒内亜鉛量が減少しており、活性化刺激による亜鉛放出も観察されないことを発見し、マスト細胞の顆粒から放出される大量の亜鉛がマスト細胞上のGPR39に結合して細胞内シグナルを修飾してサイトカイン発現を正に制御していることも見出し論文投稿した。現在リバイズ中である。また、マスト細胞だけではなく、樹状細胞やマクロファージにおいても亜鉛刺激によるサイトカイン誘導を確認した。亜鉛シグナルにおける炎症回路の活性化機構:これまでの研究から、IL-6は細胞内の亜鉛恒常性維持機構と密接な関係があり、また亜鉛投与が自己免疫疾患を抑制することから、亜鉛シグナル関連分子や亜鉛応答性分子に特に着目してスクリーニングのデータ解析を行った。その結果、細胞内の亜鉛濃度の上昇で細胞質から核に移動するMTF1の欠損で、炎症回路の活性化がほとんど認められなくなった。実際に、MTF1欠損線維芽細胞では、IL-6とIL-17刺激によるIL-6産生が激減する。MTF1欠損線維芽細胞とWT線維芽細胞のDNAアレイ解析から、MTF1欠損線維芽細胞ではCasp遺伝子が極端に減少していることが明らかになった。興味深いことに、Casp遺伝子をMTF1欠損線維芽細胞に強制発現すると、炎症回路の活性化は回復する。これらについて論文を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
計画通りの達成度を得ているため。
今年度結果をまとめて論文発表する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 8件)
Cancer Res.
巻: 74 ページ: 8-14
10.1158/0008-5472.CAN-13-2322
Arch Immunol Ther Exp (Warsz).
巻: 62 ページ: 41-45
10.1007/s00005-013-0255-9
Int Immunol.
巻: 26 ページ: 93-101
10.1093/intimm/dxt044
Front Neurosci
巻: 7 ページ: 204
10.3389/fnins.2013.00204.
Int. J. Genomic Med.
巻: 1 ページ: 106
10.4172/ijgm.1000106, 2013
Journal of Clinical & Cellular Immunology
巻: 4 ページ: 156
10.4172/2155-9899.1000156
Biomedical J
巻: 36 ページ: 269-273
10.4103/2319-4170.113187
Mediators of Inflammation
巻: 898165 ページ: 8-16
10.1155/2013/898165