研究課題/領域番号 |
24249032
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 英樹 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50317682)
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研究分担者 |
近藤 克則 千葉大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20298558)
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 社会疫学 / ライフコース |
研究実績の概要 |
当初予定通り、2013-2014年に実施された「暮らしと健康調査」の第4wave調査において対象者の兄弟・同朋に関する成育歴・職歴・健康状態について聴取した結果を用いて、健康状態と社会経済的位置(主に学歴)との関係の変化について検討をするとともに、 ついで2015年度第5wave調査を対象一部自治体で実施し、パネルを重ねた。既存データを用いた検討では兄弟・同朋と比較して学歴の達成度が異なるものをstatus inconsistencyのケースと定義した場合、高次機能低下で見られていた学歴格差が、inconsistencyがある場合では消失する傾向が確認された。inconsistentなケースは、学歴到達するうえで何らかの特殊な状況があったと考えられることから、本来見られるconsistentなケースで見られる学歴による機能格差が、inconsistentなケースを含むことで下方にバイアスされる可能性が示唆された。また体幹長を子ども時代の栄養状態のマーカーとして用いた分析では、収縮期血圧と学歴の関係は内臓肥満指標(身長・腹囲比)によって媒介される部分と体幹長(子ども自体の発達指標)によって媒介される部分が独立に存在することが確認され、このことから、幼少期に決定される生物学的要因と教育などを通じて決定される生活様式の双方がそれぞれ関連していると推察された。幼少期の状況による生存確率との関連については、分析を継続中である。なお本年度事業として、より若年の世代においても兄弟同朋情報を約800人から収集できたことから、次年度に向けてデータクリーニングを行い、比較的若年層でも同様の影響が見られるかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに既存データを用いた分析を進めるとともに、若年層調査においても兄弟同朋情報を入手することができた。当初兄弟同朋情報御に回答バイアスが見られることが懸念されたが、バイアスの見られたケースはランダムに発生していることが確認されたことから、バイアス回答を欠損扱いとする処理を施し、分析を行ったところ、当初仮説に沿った結果が得られ始めた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に入ることから、これまで進めてきたstatus inconsistentcyによる学歴ー健康格差への影響について、機能(身体・精神)、健康測定値(血圧・握力)など複数のアウトカムについて比較し、学歴格差の異なる媒介メカニズムの解明に迫るとともに、小児期・学歴などによる選択バイアスの影響についてまとめ、年度内に論文化を目指す。また若年層調査で得られる兄弟同朋情報の一部が年度明けに継続して収集回収されるのを待ち、データクリーニングを急ぎ進めたうえで、高齢者パネルで見られた階層選別による学歴ー健康格差との関係が同様に見られるかどうかを検証する。
特に27年度研究から得られた知見として血圧については幼少期の成育環境と成人期以降に形成されたと思われる生活習慣が影響していると思われ、学歴は幼少期の成育環境の結果であると同時に、成人期以降の生活習慣を形成する、複雑な位置関係にいることが推察された。一方高次機能などについては、幼少期成育環境の影響は弱く、学歴の影響はstatus inconsistencyによる影響を強く受けていることから、到達学歴と出生元の社会経済的環境から「fit」している期待された学歴到達とのかい離を産み出す、成人期以降のなんらかの社会経済的要因が絡んでいる可能性が示唆されたことを受けて、これをより定式化する作業を進展させる。
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