最終年度となる今年度では、中高齢者パネル調査「くらしと健康調査」(JSTAR)第4回調査で収集した兄弟姉妹の同胞情報について、健康状態・生活習慣などの教育格差における「社会的選択」による影響の検討を実施した。今年度は同胞との学歴レベルが一致している群と、そうでない群で2層に分け、一致していない群ではなんらかの外的影響により本来到達すべき学歴とは異なる学歴に到達しており、社会的選択の影響を逃れた可能性を想定した。 第4回調査のうち、本事業がデータ収集にかかわった5都市のデータを用いて検討したところ、握力では年齢・性など調整後、高学歴ほど握力が高い傾向がみられていたが、これは主に同胞との学歴レベルが一致していない群でのみ観察され、同胞と学歴レベルが一致している群ではこれを認めなかった。一方、喫煙習慣については高学歴では少ない傾向があるが、同胞と学歴レベルが一致している群では高学歴で喫煙が多く見られる傾向があった。うつ・IADLなどでは同胞との一致性による違いがみられなかった。ただしいずれもサンプル数が限られることから統計的有意性には至らなかった。残る5都市についてデータ貸与を求めたが、個人情報保護法の改正に伴うデータ貸出規約の変更期間にあたり、貸与申請が実施期間中に許可されなかった。研究事業終了後も引き続き検討を行う予定である。 昨年度はさらに、若年(25-50歳)のパネル調査フレーム(「まちと家族の健康調査」JSHINE)でも同様の同胞情報の収集を行い、1158人から回答を得、このうち1074人に同胞が存在した。喫煙・うつなどにおける学歴格差の関係において、同胞との学歴レベルの一致性はJSTARで観察されたのと同様の傾向が観察された。以上から、社会的選択により学歴の健康格差はバイアスされている可能性が示唆され、本研究事業を通じて、同胞情報などを用いた検討の余地が示された。
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