研究課題
本研究は、現行で治療法がないか、副腎皮質ステロイド療法しかない希少難治性炎症疾患群に対して、有効で安全な治療薬としてPAI-1阻害薬を提供することを目的として、PAI-1阻害薬で治療可能な疾患を特定する研究を進めてきた。平成24年度は骨髄再生における有用性を、25年度には多発性硬化症における薬効確認という2つの特筆できる成果をあげた。本年度は、卵巣明細胞腺癌を用いてPAI-1阻害薬の抗癌作用に関する検討を行った。公開マイクロアレイデータの解析により、PAI-1の発現レベルは予後不良と有意な相関を示すことを見出した。PAI-1 阻害薬を用いて卵巣細胞癌由来の複数の細胞株においてPAI-1を抑制した結果、細胞増殖が抑制されることを見出した。PAI-1阻害薬を用いてPAI-1を抑制した細胞株では細胞周期が停止し、G2/M期の細胞の割合が増加した。更に、PAI-1 阻害薬の処置によりアポトーシスが誘導された。これら結果から、PAI-1阻害によりPAI-1を高発現する卵巣細胞癌細胞におけるPAI-1阻害薬の有用性が示された。更に、PAI-1阻害薬の肺線維症に対する効果の評価を目的として、ブレオマイシン誘発肺線維症モデルマウスに、PAI-1阻害薬のTM5614を経口投与した。本モデルマウスは、ブレオマイシンを気管内へ投与することによって、肺胞上皮細胞障害、炎症および線維化を呈するモデルである。TM5614を 21日間強制経口投与した結果、TM5614投与群は、対照群に比べて、肺ハイドロキシプロリン量の有意な減少を示し、PAI-1阻害薬が肺線維症に効果を示す可能性が示唆された。また、骨髄再生における医師主導治験(第Ⅰ相試験)を終了し、多発性硬化症治療薬に向けての非臨床安全性試験を実施した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件)
Am J Physiol Renal Physiol.
巻: 308 ページ: F614-624
10.1152/ajprenal.00616.2014.
Cancer Biol Ther.
巻: 16 ページ: 253-260
10.1080/15384047.2014.
Journal Molecular Cancer Therapeutics.
巻: 掲載確定 ページ: 掲載確定
PLoS One.
巻: 10 ページ: e0116504
Nat Rev Nephrol.
巻: 10 ページ: 290-296
10.1038/nrneph.2014.36.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 13 ページ: 7090-7095
10.1073/pnas.1321942111.
Stem Cells
巻: 32 ページ: 946-958