研究課題/領域番号 |
24249034
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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研究分担者 |
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60401072)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2016-03-31
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キーワード | 薬剤反応性 / 薬理学 |
研究概要 |
創薬全体の成功確率が1/1000程度と極めて低いことの主要原因として、医薬品副作用の問題が挙げられ、創薬段階における副作用予測精度が低い点がボトルネックとして指摘されている。本研究では、医薬品の副作用をその発現メカニズムに対するシステム的理解に立脚して予測する手法を構築する。具体的には、重症化した際の影響が大きくかつ予測が難しい心障害および肝障害に焦点を絞り、創薬初期段階で取得可能な実験データに基づいて、臨床における副作用発現を予測するシステムを構築する。本研究で構築するモデルは、副作用発現の分子メカニズムに対する解析結果に基づき、生理学的な実体を伴ったTDモデルを構築し、TKモデルと連動して毒性発現を統合的に予測可能とする。平成24年度は、アポトーシス関連経路および上流シグナル伝達経路に関し、包括的なシステムバイオロジー・マップを構築した。これらのマップを基に、心筋細胞におけるたんぱく質発現プロファイルを反映させた上で統合し、心筋細胞における薬物応答性を記述するためのシステムバイオロジー・マップへと拡張した。さらに各反応に対応する速度論式を定義し、動的な数理シミュレーションを可能とするためのモデルを最終的に構築した。本検討で得られるような大規模な数理モデルに関して、数千におよぶ速度論的パラメータを推定する試みはこれまで行われていなかった。そこで、パラメータ推定と動的シミュレーションを同時並行で行うクラスター・ニュートン法を応用することを考え、Matlab上で動作可能な形式で実装した。構築した計算手法によって本研究で構築した数理モデルの動的シミュレーションとパラメータ推定が可能であることが示された。また、マウス由来の初代培養心筋細胞および肝細胞に関して、薬物応答性プロファイルを取得した。得られたデータは今後の数理モデルを用いた解析に利用可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋細胞に関し、薬剤応答性を記述するための大規模システムバイオロジー・モデルの構築が終了し、大規模モデルの動的シミュレーションを行うためのアルゴリズムの実装も完了した。また、細胞モデル動物モデルの構築も概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に構築した大規模システムバイオロジー・モデルを用いた動的シミュレーションによって、心筋細胞のアポトーシスが誘導される過程を中心的に制御する分子ノードの抽出を目指した検討を進める。また、肝細胞に関しても同様の大規模モデルの構築を進める。さらに、in vitro実験系による実測結果との対比を行い、数理モデルの妥当性を検証する。また、ヒトの細胞培養系の構築を進め、マウスモデルからの外挿を試みる。
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