研究課題/領域番号 |
24249038
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西渕 光昭 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (50189304)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2015-03-31
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キーワード | 腸炎ビブリオ / コレラ菌 / 腸管出血性大腸菌 / O157 / 国際研究者交流 / タイ / マレーシア |
研究概要 |
腸炎ビブリオに関しては、計画通りのIMB(免疫磁気ビーズ)を作成した。すなわち、70種以上の既知のK抗原に対する抗体を10グループに分けて、多価抗体を付着させたIMBを作成し、それらを混合して作成した1セットのIMBのK抗原(K1~K69)のいずれかを発現する腸炎ビブリオに結合する多価のIMBとし、in vitro実験で有用性を再確認し、この方法で調製したIMBを使用した。アルカリペプトン水増菌1回+SPB増菌培養 [最多で3回])にIMS法(PickPen方式)の操作を組み込んで標的菌を選択的に増殖させた。IMS法の特異性は選択的に分離した腸炎ビブリオのK抗原型を決定して調べた。必要に応じて増菌培養の特定のステップでボイル上清をDNAサンプルとした。マーカー遺伝子の有無を検査した。(1)従来のPCR法を組み合わせた方法(2) IMS法→ LAMP法を用いた方法(MPN–IMS-LAMP法;乾燥状態と液状の反応試薬を比較した場合も、DNA増幅を肉眼判定と光学的測定法で判定した場合も作用効率に差はなかった)、および(3)リアルタイムPCR法を比較したところ、感度は概して、(2)=(3)>(1)であった。ただし、検出感度の差は標的菌の分布頻度が低い国産サンプル(三重県で購入したアサリ,ハマグリおよびシジミ)を検査した場合の一部のサンプルで認められ、標的菌の分布頻度が高いことを確認済みのサンプル(タイ国ハジャイ市の朝市で購入したハマグリ)では、認められなかった。 EHECおよびコレラ菌についても、計画通りのIMBを作成し、人為的に汚染させたサンプルおよび市販サンプル(それぞれ肉および養殖エビ)で評価を開始した。これらの菌の場合、以下に記載したようなやや重大な問題があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸炎ビブリオに関しては、予定より早く順調にプロジェクトが進んでいる。予想通り、対象菌株の濃度が低いサンプルで、本研究で開発した高感度・迅速・簡便な検査法が有効であることが判明し、新しく開発した方法を用いると、従来のPC R法より事実上感度が良くなると言える。昨年11月には、FAO主催のワークショップ(シンガポール)で行われたvalidationにおいてアジアの各国から参加した人々のほとんどは他の方法より我々の方法が優れているという評価を下した。本法はリアルタイムPCRとほとんど同等の高感度検査法であることが示された。一方で、本法は乾燥試薬を採用すれば、試薬は室温で輸送可能、 DNA増幅結果を(電気泳動なしで)肉眼判定が可能、(一定の温度で反応が進行するので)操作が単純などのメリットを有するすので卓越した方法であると言える。 一方で、 EHECおよびコレラ菌では、予期せぬ問題が発見されたため、プロジェクトの進行がやや遅れている。作成したIMSなどを含む新しい検査法の評価のために適した(ある程度汚染した)市販の食品(肉または養殖エビ)を販売している地域/店舗がなかなか見つからなかった。またコレラ菌の場合、O1型は良いが、O139型の菌株は菌体外に莢膜様物質を産生し、 IMS の特異的反応を阻害する菌株が多いことが明らかになったので、対応策を計画しているところである。 以上を総合的に評価して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
腸炎ビブリオに関しては、国際的なワークショップなどを介して、世界各地で従来のPCR法、本研究で開発した新しい方法(以下「MPN-IMS-LAMP法」と記載する)、およびリアルタイムPCR法を比較して評価結果を蓄積していく。蓄積した結果を比較解析し、3方法の優劣について評価する。この過程において、MPN-IMS-LAMP法が最大効果を発揮する安定な条件の絞り込み(特にAPW増菌培養の時間、SPB増菌培養、およびIMSの必要回数とLAMP法の乾燥試薬タイプの反応効率に関して)を行う。trh遺伝子に関して、従来のPCR法が陽性、LAMP法が陰性を呈するサンプル(増菌培養液)が発見されている理由を説明する作業仮説(環境株における塩基配列のバラツキ)を立ててこれを検証する(塩基配列の決定と解析)。結果如何によっては、プライマーを再設計し、LAMP法を改良する。 EHECに関しては、タイとマレーシアの国境で市販している牛肉がEHECの汚染度が高いことが明らかになったで、この地域で新しい検査法を評価する。 コレラ菌に関しては、O139型菌株が莢膜様物質を産生しにくい培養条件を探して、それを組み込んだ検査方法を評価の対象にする。培養条件の探索が成功しない場合は、O1型のみについてIMS法の効果を評価し、LAMP法のみの場合とIMS法を併用した場合を比較して、 IMS法の採用を見送るか否か検討する。東南アジア地域でコレラのアウトブレイクが発生している地域の情報を収集し、検査法の評価場所を検討する。
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