研究課題
1. 特定の食材と主要な食中毒原因菌の組み合わせ3種について、開発している検査法のうち、二枚貝と腸炎ビブリオの組み合わせについて、最も研究が進んでいる。予定通り、免疫磁気ビーズ法とLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法を組み合わせて作成した高感度で特異性の高い迅速・簡便な標的遺伝子検査法は、病原菌株の分布濃度が比較的低い日本産の二枚貝からも効率良く病原因を検出できることを証明した。また、病原性株の分布頻度・濃度の高いタイ国ハジャイ市での調査でも高感度性を確認できた。さらにこのシステムにMPN法の原理を適用した定量検査法を、世界の代表地域で二枚貝を対象に比較検査に供した。2013年8月に上海で開催した日中ジョイント・ワークショップおよび12月にペルーとチリで開催したワークショップ(後者は、FAO主催)において、上記のようなメリットが高く評価された。本法はリアルタイムPCRと同程度の高感度を示す一方で、簡便性という点では、本法が遙かに勝ることがワークショップ参加者の意見に集約されていた。2. 牛肉と腸管出血性大腸菌の組み合わせについても、同様に予定通り免疫磁気ビーズ法とLAMPを組み合わせて作成した高感度で特異性の高い迅速・簡便な標的遺伝子検査法を、日本国内で購入した市販牛肉(病原株による汚染がない)を用いて評価することが困難であった。しかし、夏場に実施したタイ国ハジャイ市での検査において(市販牛肉が腸管出血性大腸菌によって高頻度に汚染されているため)感度が高く、特異性も確認(O157型およびO111型菌を分離)できた。3. 養殖エビとコレラ菌の組み合わせについては、菌が産生する莢膜様菌体外産物に起因する免疫磁気ビーズの作用阻害であろうと思われる現象のため、予定していた有効な検査法がまだ完成していない。
2: おおむね順調に進展している
特定の食材と主要な食中毒原因菌の組み合わせ3種のうち、上記のように、1.に関しては非常に研究が進展し、2. については予定通り、3. については予定より遅れているので、おしなべて平均的であり、(2)と判定した。ただし、3. については、根本的な問題があると判断し、今年度から下記のような方針に切り替えたので、進展の程度の判定は従来の計画とは異なる基準で判定している。
1.については、市販の二枚貝中に高濃度の病原菌株が含まれているタイ南部で市販の二枚貝を用いて、(1)および(2)を実施する。(1) 増菌培養のどの段階が免疫磁気ビーズ法を適用するのに最も適しているか(感度および特異性を指標に判断)を調べ、必用に応じて、プロトコールを修正する。(2) 反応系の中の酵素類を含む反応試薬系を新たに開発されたドライ試薬と差し替え可能か否かを調べる。(2)で酵素類の差し替えが可能ならば、(1)の改良法で、ドライ試薬と差し替えたプロトコールを最終バージョンの検査法とする。この方法を用いて、我々が独自に選定した国々およびFAOが選定した国でワークショップを実施して、参加者によるvalidationに供する。2. についても同様に、市販の牛肉中に病原菌株が高濃度に含まれているタイ南部で市販の牛肉を材料として、本研究で確立した最終検査法用いて検査し、日本国内の結果と比較して、結果の違いの原因について考察を加える。3. に関しては、菌体最外層成分として、莢膜様構造を形成している物質を産生させない条件およびこれを菌体表面から取り除く方法を考案し、その後に研究期間の終わりまで、可能な範囲内で予定していた計画に従って研究を推進する。その他、本研究で確立する検査法の原理を、将来他の重要な食中毒原因菌(カンピロバクターなど)の検査に適用可能か否か、あるいは、確立した方法を途上国のフィールドで実施可能にするモーバイル・システムを検討して、後に続く研究の計画をたてる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
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