研究課題/領域番号 |
24249039
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大瀧 慈 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20110463)
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研究分担者 |
原田 浩徳 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (10314775)
川野 徳幸 広島大学, 平和科学研究センター, 准教授 (30304463)
佐藤 裕哉 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (30452626)
原田 結花 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (50379848)
川上 秀史 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70253060)
和泉 志津恵(大久保志津恵) 大分大学, 工学部, 准教授 (70344413)
今中 哲二 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (90109083)
遠藤 暁 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90243609)
冨田 哲治 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (60346533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線発がん / 原爆被爆者 / コホート研究 / 多段階発がん仮説 / 数理モデル / 被爆時年齢依存性 / 放射性曝露要因 |
研究概要 |
急性放射線被曝による固形がん超過相対死亡危険度(ERR)は, 放射線影響研究所によるLSSにより,(全部位平均で)1Sv当たり約0.5であることが報告されている.ただし, 同研究では誘導放射線被曝や黒い雨などによる放射性降下物による健康被害への影響は検討されていない.今回, 我々は広島大学原爆被爆者コホートデータ(ABS)を用いて,多段段階発がん数理モデル(大瀧ら, 2012)の適用による被爆者の(白血病を除く)固形がんの線量・距離依存性および被爆時年齢依存性について解析を行った.対象は広島で原爆に被爆して1970年1月1日の時点で広島県内に居住(生存)していた直接被爆者27643人(男性11480人、女性16163人)であり, 追跡は最長で2009年12月31日までの期間である.なお, 広島県外へ転出した場合は「中途打ち切り」として扱った. 解析の結果, 固形がん死亡ERRへの初期被爆線量の寄与は距離関数(遮蔽を考慮していない爆心から被爆時所在までの地上距離の冪乗関数)に比べて小さく相対的に説明力が乏しいこと, 10歳未満の幼少時被爆の場合または50歳以上の高齢被爆の場合に低く, 相対的に15歳~39歳で被爆した場合に高い(p<0.001)ことが解った.一方, 推定されたERRの男女差は, 幼少時被爆の場合には無かったが, 10歳以上では男性の方が高くなり15歳以上20歳未満被爆の場合には女性に比べて約30%超過していた. なお, 初期放射線線量に対する感受性は, 20歳未満の若齢者がやや高い(p<0.05)ことが検出されたが, 高齢者被爆者での上昇や低下は検出されなかった.上記の結果より, 広島の原爆被爆者における固形がん死亡ERRには, 原爆の初期放射線だけでなく, 被爆者の被爆直後の行動状況に依存する間接被爆による大きな影響が推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
広島大学原爆放射線医科学研究所で開発し管理・運用している広島原爆被爆者を対象にしたコーホートデータを用いて, 固形がん死亡を目的の事象とする時間依存型Cox重回帰法による生存時間解析を行った。その結果,初期(直接被爆)線量による固形がん死亡危険度の超過は被爆時年齢が若い場合に総体的に高くなっていたが,非初期線量によるものと思われる爆心からの距離に依存した固形がん死亡の超過危険度として,被爆時年齢が30歳~40歳で極大となる統計的に有意な影響の存在を突き止めることができた。また,入市被爆者の入市日別固形がん死亡の危険度の分布の解析により,広島では,1945年8月6日に限定された危険度の超過が推定された。これらの解析により,原爆被爆者の固形がん死亡の超過危険度は, 初期線量だけでなく半減期が数時間の放射能を持つPM2.5が大きく関与していることが推察され, 研究開始当初の目標を超えた内容での原爆被爆者の固形がん死亡の超過危険度の要因の解明に迫ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
広島大学原爆被爆者データベース(ABS)に基づいて得られた解析結果について,放射線影響研究所が公開しているLSSデータを用いた解析で同様な結果が得られるかどうか検証したい。前年度の研究で得られた非初期放射線依存の曝露要因について,その本質的実態の解明を行うために, ABSの更なる整備を行い, より詳細なデータ解析を行いたい。固形がん以外の死因について,例えば,脳血管疾患による死亡や心疾患による死亡についてもABSやLSSの公開データを用いて,初期線量および非初期線量による死亡危険度への線量影響やそれらの曝露時年齢依存性や爆心からの距離依存性についても統計解析を行いたい。
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