研究分担者 |
原田 浩徳 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10314775)
川野 徳幸 広島大学, 平和科学研究センター, 教授 (30304463)
佐藤 裕哉 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (30452626)
原田 結花 順天堂大学, 医学部, 助教 (50379848)
冨田 哲治 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (60346533)
川上 秀史 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70253060)
和泉 志津恵(大久保志津恵) 大分大学, 工学部, 准教授 (70344413)
今中 哲二 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (90109083)
遠藤 暁 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243609)
星 正治 広島大学, 平和科学研究センター, 名誉教授 (50099090)
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研究実績の概要 |
広島原爆被爆者における固形がん死亡リスクの時空間分布を推定し可視化することで, 初期放射線線量および非初期放射線線量のリスクへの寄与について検討を行った.その結果,放射線被曝による固形がん死亡リスクの超過に関して, 若齢期被曝の場合に感受性が高いこと, 非初期放射線被曝の影響が成人の被爆者に大きいことが推定された.同リスクの地理分布の特徴として, 爆心地近傍の同心円状に分布するリスクと,北西の郊外地域の高リスク領域が検出された.なお,爆心地近傍のリスクもその被爆距離依存性の特徴により初期放射線が主要因ではない可能性が大きいことが判明した.爆心地近傍では放射性物質を含んだ塵などが爆風により同心円状に拡散した放射性降下物の影響が示唆された. 低線量放射線被曝における線量評価方法について検討した.具体的には, 原爆や原発事故に伴う被曝線量の評価として, 核分裂生成物が降下にした放射性物質からのγ線被曝線量の評価法およびβ被曝線量の評価法を行った.低線量被曝者で増加の見られる造血器悪性腫瘍, 骨髄異形成症候群において, 放射線被曝により高頻度に変異が生じるRUNX1遺伝子に注目し, RUNX1変異による骨髄異形成症候群の発症機序の解析を行った. その結果, 様々な遺伝子異常と協調して造血機能破綻をきたすこと, 被曝後年月を経て悪性腫瘍を発症する機序が明らかとなった. 従来、放射線の健康影響は外部被曝によるものが注目されていたが、我々の研究結果は、放射性粉塵の吸入を含む内部被曝の発がんなどの後障害への危険度が事前の想定を超えて大きいことが強く示唆された.医療被曝や宇宙放射線被曝による健康リスク管理の観点からは朗報であるが,放射性廃棄物の管理の強化や原発事故などに伴う放射性プルームへの被曝の影響については(特に、若齢者被曝者を中心に),今後,速やかに再検討される必要があると思われる.
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