研究課題
前年度に引き続きFSTL3の肥満糖尿病における意義を検討するために、FSTL3アンチセンスオリゴヌクレオチドをdb/dbマウスに投与し、FSTL3の脂肪組織における発現を1/3程度に抑制したところ、著しく耐糖能が改善し、肝臓や骨格筋におけるインスリン感受性も亢進した。また、炎症性アディポカインの発現も抑制されていた。一方、FSTL3はTGFβ superfamily蛋白の受容体への結合を阻害することがそのおもな機能と考えられており、いくつかのTGFβ superfamily蛋白について検討を行ったところ、Activin AおよびActivin Bを肥満マウスにアデノウイルスで過剰発現させると、耐糖能の著しい改善が認められることから、 FSTL3はこれらの作用を抑制していることが考えられた。また、このような抗糖尿病作用は、Activin B投与でより顕著であった。ActivinとFSTL3を同時にアデノウイルスで過剰発現させると、Activinの血糖改善作用は完全に消失した。したがって、生体内において肥満の際に増加するFSTL3はActivinの作用を阻害することによって、糖尿病を引き起こしていると考えられた。また、Activin Bの発現は、脂肪組織において肥満と共に増加する。FSTL3の発現はActivin Bによって誘導されることが知られており、一種のnegative feedback機構を形成しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
FSTL3の血糖悪化作用が、Activinの抗糖尿病作用を阻害することであることを見いだしており、特にActivin Bが抗糖尿病作用に優れていることを示すことができている。Activin Bでは、インスリン抵抗性改善のみならずインスリン分泌の増加も認められており、このメカニズムの解明により画期的な抗糖尿病治療薬の開発に結びつけることができる可能性がある。
今後は、Activin Bノックアウトマウスの解析を行い、糖代謝異常があるのか、あるとすればそのメカニズムを解析する。また、Activin Bのマウスへの投与や肝臓、骨格筋、脂肪、マクロファージなどの培養細胞へのActivin添加により、惹起されるシグナルや代謝・炎症への影響の解析を行い、Activinの抗糖尿病作用のメカニズムを解明する。さらに同定されたシグナル伝達経路の鍵分子をターゲットとして、糖尿病治療への応用が可能かどうか遺伝子改変動物などを用いて解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
Nature
巻: 503 ページ: 493-499
10.1038/nature12656