研究概要 |
ポリコーム群複合体はヒストンの化学的修飾を介して転写を抑制的に制御し造血幹細胞機能を維持する。このような中、ヒストンH3K27のトリメチル化活性を有するポリコーム群遺伝子EZH2の機能喪失型変異がMDS, MPNで同定された (Nikoloski et al. Nat Genet 42: 665, 2010; Ernst et al. Nat Genet 42: 722, 2010)。そこで、EZH2欠損マウスの長期観察を行ったところ、約1年の時間を要するもののほぼ全例がMPNを発症することを明らかにした。また、 MDS, MPNにおいてEZH2の変異がTET2やRUNX1などの遺伝子変異と共存することから、Tet2を低発現し(野生型の20%)、同時にEzh2を欠損するマウス(Tet2hypo/hypoEzh2Δ/Δ)を作製したところ、ほぼ全例が早期に MDSまたはMPNを発症した。また、Ezh2の欠損(Ezh2Δ/Δ)細胞に変異型RUNX1 (S291fs) をレトロウイルスを用いて強制発現すると、変異型RUNX1 によるMDSの発症が著明に促進されることも確認した。以上の所見は、MDS, MPNで同定されるEZH2の機能喪失型変異 (~13%) が、TET2遺伝子変異 (5~46%)やRUNX1遺伝子変異 (5~10%) と協調して病態形成に関与することを如実に示している。
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