研究課題
今年度は、造血細胞特異的にポリコーム群遺伝子Ezh2を欠損 (Ezh2Δ/Δ)するマウスの長期観察を行い、骨髄異形成症候群(MDS)とともに骨髄増殖性腫瘍(MPN)様の症状を併せ持つMDS/MPN病態を発症することを確認した。この知見は、MDS, MDS/MPN患者においてEZH2をはじめとするポリコーム群遺伝子の機能喪失型変異が頻繁に認められる事実と一致するものであり、EZH2機能異常の疾患発症への関与を強く示すものである。さらに、Ezh2欠損細胞にMDSで認められるRUNX1変異遺伝子をウイルスを用いて発現させると、MDS病態が著明に促進されることを見いだし、その癌抑制遺伝子としての機能が明らかとなった。一方で、EZH2遺伝子変異はT-ALLにも高率に存在し、Eraly T-cell precursor (ETP)-ALLでは19%に変異が認められる。p53とEzh2を同時に血液細胞特異的に欠損するマウスを作成したところ、71%のマウスがETP-ALL様の病態を発症することを見いだした。このマウス腫瘍においては、白血病化を伴う胸腺腫・リンパ腫が認められ、腫瘍性T細胞の分化がDN1~2の段階で停止し、CD3の発現は細胞内にとどまり細胞外には発現されない。また、これらの未分化T細胞はc-Kitを発現することが観察されている。このデータは、ETP-ALL患者にPRC2関連遺伝子の変異が同定される知見によく符合するものである。以上のマウスモデルは、造血腫瘍の発症におけるEZH2の機能を解析する上で優れた系であり、この系を用いて様々な解析を進行中である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
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10.1038/ncomms6872
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