研究課題
BAALC高発現は急性骨髄性白血病の予後不良因子として広く知られている。我々はBAALC過剰発現によりMEK-ERK経路が特異的に活性化されること、さらにBAALCはMAPK 経路の足場タンパクMEKK1(MAP3K1)および細胞の分化成熟に重要な転写因子KLF4に結合することを発見した。BAALCは定常状態において細胞質内でKLF4と結合しその核内移行を阻害しているが、刺激依存的にKLF4から解離しMEKK1と結合し、MKP3のERKへの結合を競合的に阻害することで、ERKのリン酸化の維持に働くことを見出した。さらに我々はBAALC高発現白血病においてMEK-ERK経路が有効な治療標的となりうることをヒト白血病検体を用いて明らかにした。また、骨髄微小環境との相互作用は造血細胞の機能を規定する重要な因子であるが、我々は、骨髄に存在する脂肪細胞の重要な液性因子であるアディポネクチン(Adipo)のノックアウトマウスを用いて造血系への作用を解析した。Adipoを欠く造血環境では骨髄マクロファージからの炎症性サイトカインTNF-αの分泌が慢性的に亢進し、造血幹・前駆細胞分画において増殖シグナルの細胞内抑制因子であるSocs3が異常に高発現する結果、G-CSFや感染に対する顆粒球増殖応答が減弱することを明らかにした。また、ヒト変異型ASXL1ノックインマウスおよびヒト変異型DNMT3Aノックインマウスの作製が完了し、解析の基盤が整った。
2: おおむね順調に進展している
BAALC高発現急性骨髄性白血病細胞の成立において協調的に働くシグナルのいくつかを同定し、実際に治療標的になりうることを患者検体を用いて明らかにしたほか、Adiponectinが造血系に果たす役割を明らかにした。また、いくつかの白血病関連遺伝子の変異ノックインマウスの作製が完了した。
研究の体制に大きな変更はない。作製が完了した遺伝子変異ノックインマウスを利用して、さまざまな白血病遺伝子との組み合わせによって造血器腫瘍のマウスモデルを構築する。このモデルマウスを用いて治療標的となるようなシグナルを網羅的に探索して同定する。また、今後もヒト症例検体が利用しやすい研究環境である利点をいかして、ヒト症例検体のゲノム解析を推進し、治療抵抗性や病像の進展に関わるクローンの遺伝学的な特性を明らかにする。そのほか、現在進行中の白血病関連遺伝子の分子生物学的な機能解析や、造血環境側の因子と白血病細胞の相互作用の解析を引き続き進め、化合物スクリーニングなどの創薬にまで展開することを目標とする。
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