研究課題
造血器腫瘍の成立や進展を助長する要素の一つにゲノム不安定性がある。このメカニズムの一端を解明するため、われわれはJAK2V617F変異体強制発現によるマウスでの骨髄増殖性腫瘍発症系を用いて、腫瘍細胞の産生する液性因子Lcn2によって隣接する細胞内の活性酸素が増加し、ゲノムDNAの損傷が亢進することを見出した。細胞内の活性酸素増加には細胞内への鉄の蓄積が関与していた。この成果をBlood誌に報告した。白血病原性転写因子Evi1の過剰発現は急性骨髄性白血病症例の5~10%で認められ、予後不良な傾向にある。われわれは、Evi1過剰発現によって白血病を発症したマウス、およびin vitroで不死化したマウス造血細胞を用いて、Evi1の過剰発現細胞ではthrombopoietin(THPO)シグナルが重要な役割を果たしていることを示した。Evi1過剰発現白血病細胞の中でもTHPOの受容体であるMPLを発現している分画にはleukemia-initiating-cellがより多く含まれており、この分画はフィーダー細胞との共培養においてTHPO依存性にBCL-xLの過剰発現傾向を示し、高い生存・増殖活性を示した。このようなシグナル経路がEvi1過剰発現白血病の治療抵抗性の一因を担っているものと考えられた。この成果をBlood誌に報告した。また、急性骨髄性白血病細胞におけるオートファジーの役割を明らかにするため、オートファジー経路の主要構成因子であるAtg5とAtg7のノックアウトマウスを用いて、MLL-ENL白血病キメラ遺伝子強制発現によるマウス白血病発症系などで解析を行なった。その結果、Atg5あるいはAtg7の欠損により、末梢血中の白血病細胞数の減少とアポトーシスの亢進が認められた。この成果を第56回米国血液学会で報告した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Blood
巻: 124 ページ: 3587-3596
10.1182/blood-2013-12-546275.
巻: 124 ページ: 2996-3006
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Oncogene
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