研究課題
造血幹細胞から種々の血液細胞がつくられる過程に関して、本研究は、血液細胞の主要な系列の生理的な分化経路を解明することを主目的とする。申請者らは前駆細胞の分化能の詳細な解析から、独自の造血モデル(ミエロイド基本型モデル)を提唱し、実証してきた。このモデルは現在では「分化能マップ」として正しいと考えられているが、血液細胞の「生理的な生成経路」は依然不明のままである。本研究の戦略としては、フェイトマッピングの手法を用いる。特にミエロイド系細胞がミエロリンフォイド前駆細胞とミエロエリスロイド前駆細胞のどちらに由来するのかを確かめたいと考えた。具体的にはミエロリンフォイド前駆細胞をgeneticにマークするためにFlt3の発現に応じてCreを発現するマウスとLox-GFPマウスを掛け合わせたマウスなどを用いるという方法を計画した。本研究により、血液細胞の生成経路図を完成させる事が可能であると考える。本研究では、まず作製したFlt3-Creで、レポーターとしてCAG-Lox-GFPあるいはRosa26-Lox-RFPを用いて、マークされた系列とマークされる率を計測中したが、全ての系列がマークされてしまった。この系に関してはレポーターとしてレインボーマウスを用いた実験を進めている。またFlt3-ERCre::Rosa26-lox-RFP成体マウスにタモキシフェンを投与する系を用いた実験も行ったが、この場合はマークされる率が低く、あまり明確な結果はえられなかった。別なFlt3-ERCreラインを作製して再実験を試行中である。
3: やや遅れている
24年度はラボの移動(理研から京大)があったので、動物実験があまり進まなかったが、25年度には計画通りの実験が進められた。Flt3-ERCreマウスを用いて誘導的にミエロ-リンフォイド前駆細胞をフェイトマッピングする方法を用いてきたが、マッピングの効率があまりよくなく、明確な結果があまり得られなかった。一方でFlt3-ERCreマウスの別ラインの作成を25年度にすでに開始しており、26年度にはそれを用いた実験を行う予定である。
Flt3-ERCreマウスの別ラインの作成を開始ししており、26年度は、こうしてできたマウスで解析を行う予定である。すなわち、Flt3-ERCre::Rosa26-lox-RFP成体マウスにタモキシフェンを投与し、ミエロ-リンフォイド前駆細胞のみを誘導的にマークする。一定の期間後、骨髄、胸腺、脾臓、末梢血中の各種血液細胞の中で遺伝的なマークの入った細胞(RFP陽性細胞)の比率を計測し、それによりミエロ-リンフォイド前駆細胞由来の細胞の割合を確定する。一方、本計画の初期(24年度)にFlt3-Creを作成した。この系を用いた場合は、恒常的にミエロ-リンフォイド前駆細胞をマークできると考えたが、実際に実験を行ってみるとエリスロイド系までマークされてしまう(すなわち全系列がマークされてしまう)傾向がみられたので、フェイトマップに適していなかった。そこでタモキシフェンの投与量を調整することでマーキングの効率を変えられるFlt3-ERCreの系に切り替えたという経緯がある。しかし、Flt3Creの系も、レポーターのシステムを工夫すればフェイトマッピングに使える可能性があると考えた。いわゆるレインボーマウスといわれるレポーターマウスを用いて、複数のクローンのフェイトを追い、各系列間でのクローンの混在比を比較する実験を計画している。これにより、前駆細胞の動態が辿れると考えられる。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
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