研究課題
近年、従来のアレルギー炎症はTh2から産生されるIL-4により制御されると言ったTh2を中心にアレルギー性炎症病態が考えられてきたが、これらTh2サイトカインはTh2細胞のみならず、自然免疫系を構成するNKT細胞、肥満細胞、好塩基球やNatural Helper細胞等からも産生される。そのため、「どの細胞から、どのタイミングで産生されるIL-4やIL-13が生体内におけるアレルギー炎症を構成するのか?」「これら細胞系におけるIL-4・IL-13産生制御はどうなっているのか」「IgE抗体は何処で作られ、その制御をしている細胞はいずれか?」が不明な課題となっている。そこで本研究では、生体内レベルで起こるアレルギー反応を対象にこれら疑問に答えていくことを目的に、サイトカインレポーターマウスなどを使うことで、生体内動態のイメージングを行い、アレルギー炎症に対する次世代治療戦略の基盤形成を目指す。
2: おおむね順調に進展している
1)IL-4・IL-13レポーターマウスによる生体内イメージング解析IL-4やIL-21の生体内動態をモニターするため、human CD2(hCD2)をレポーターとするIL-4-CD2 BAC TgとIL-21-CD2 BAC Tgを用い、アレルギーモデルにおける生体内動態について、脾臓、リンパ節、腸管リンパ組織、骨髄、胸腺を対象に経時的データを集積した。本年度は慢性アレルギー病態のモデルとして、卵白アルブミンに対して特異的なT細胞抗原受容体を持つIL-4-CD2 BAC Tgより誘導したTH2細胞を用いた系を構築した。試験管内で卵白アルブミン刺激によって誘導したTH2細胞を、抗原刺激を受けたことの無いマウスに移入後、卵白アルブミン免疫すると、このマウスは非常に高濃度のIgE抗体を産生する。T細胞におけるIL-4の発現をGFPでモニターしたところ、移入されたTH2細胞はT細胞が数多く集積するT細胞領域に分布し、抗原刺激を受けることによって濾胞ヘルパーT細胞(TFH)として2次リンパ組織内の胚中心へと集積する事が明らかにされた。この結果は一度TH2細胞として分化した細胞でも、2次リンパ組織と言う微小環境で抗原刺激を受けると、TFHに似た動向を取るようになり、胚中心に集積することでB細胞と結合し、IgE抗体を作ることができることが明らかにされた。この卵白アルブミン特異的なTH2細胞が移入されたマウスを、さらに頻回刺激するとアナフェラキシー状態になり、ショック症状を起こすことから、今回構築したTH2細胞を用いた系は、慢性的アレルギー状態におけるアナフェラキシーのモデルになることが示された。また、マウス個体レベルでTH2細胞を誘導する試みをIL-13 GFP レポーターマウスを用いて行ったところ濾胞ヘルパーT細胞とは異なり、TH2細胞の誘導には長期的な抗原感作が必要であることが明らかとなった。
この件実績に基づき、TH2細胞によって誘導されるIgE抗体産生制御機構を明らかにして行く。従来よりIgE抗体産生の過程には IgG1からIgEとIgMからIgEへと移行する2つのスイッチメカニズムが考えられている。われわれは、TH2細胞によっておこるIgE抗体産生がどちらのメカニズムによるものかをIgE抗体遺伝子の配列を読み取ることにより明らかにする。また、作られたIgE抗体について体細胞変異の有無を検証することで、免疫記憶の存在を検証していく。
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