研究課題/領域番号 |
24249059
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木戸 博 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (50144978)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重症化 / 季節性インフルエンザ / 高病原性鳥インフルエンザ / 多臓器不全 / 代謝障害 / プロテアーゼ阻害剤 / 血管内皮細胞機能障害 / エネルギー代謝障害 |
研究概要 |
研究目的を達成するため以下の試みを実施して成果を挙げた。 1)季節性・高病原性鳥インフルエンザウイルスそれぞれのHAプロセシングプロテアーゼの阻害剤を検索して新規ウイルス侵入阻止剤を提案する試みを実施した。高病原性鳥インフルエンザウイルスのHAプロセシングプロテアーゼTMPRSS13の阻害剤のスクリーニングを実施しているが、天然物ライブラリーの中からでは、今のところ有望な阻害剤が見出せていない。一方、季節性インフルエンザウイルスの場合、唾液や鼻汁中に存在するLeukocyte Protease Inhibitorが候補として浮上してきている。また、当グループが作成したtrypsin 1,2のKOマウス、CPT2KIマウスを用いた発症機序の解析も進展中である。また繰り越し期間中にTMPRSS13のKOマウスを用いた発症機序の解析が完成して高鳥インフルエンザウイルスの増殖にTMPRSS13が大きく関与していることが証明された。 2)多臓器不全抑制のための代謝改善薬の検索:①PDHの活性抑制を解除するPDHK阻害剤のスクリーニングの結果、有望な化合物が数種類見いだされ、動物実験で極めて有望な化合物として同定された。これまでみいだされていたジクロール酢酸の約100倍強い阻害活性を見出した。②CPTIIの転写を促進する高脂血症治療薬Bezafibrateでミトコンドリアの活性化と細胞内ATPレベルの改善を見たことから、CPTII活性が半減しているヘテロCPTIIKOマウスで最適投与量、期間を検証している。さらに熱不安定性CPT2 KIマウスを用いたヒトのインフルエンザ脳症モデルマウスが完成した。 3)上記に加え、感染重症化のバイオマーカーの検索が進み、感染の重症化に先立って血液中のAlarmシグナルとして、乳酸値/ATP値が敏感なAlarmシグナルであることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロジェクトの初年度ではあるが、多臓器不全抑制のための代謝改善薬の検索において、有望なPyruvate Dehydrogenase Kinase 4の阻害剤が見いだされ、インフルエンザ感染が誘導する多臓器不全を劇的に改善した。また多臓器不全抑制のためのその他の代謝改善薬として、Bezafibrateの有効性の検討、感染重症化のバイオマーカーの検索として乳酸値/ATP値、等で有望な成果が挙がっている。また、TMPRSS13のKOマウスを用いた発症機序の解析が完成し、高鳥インフルエンザウイルスの増殖にTMPRSS13が大きく関与していることが証明され、当初計画を超えるスピードで成果が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の経費を翌年に繰り越すに至った理由に、当初計画していたKOマウスの実験が、マウスの増殖が予定していたように増えずに、予定していた経費が次年度に繰り越されることとなった。これらは止むお得ない事情によるものであったが、繰り越し期間中に実験を完成することができた。 今後の研究は、インフルエンザ感染の重症化と多臓器不全に有効な治療薬の絞り込みを集中して行う予定である。
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