研究課題/領域番号 |
24249061
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
中川原 章 千葉県がんセンター(研究所), 研究局, センター長 (50117181)
|
研究分担者 |
大平 美紀 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノム研究室, 室長 (20311384)
高取 敦志 千葉県がんセンター(研究所), 小児がん研究センター, 研究員 (40455390)
中村 洋子 千葉県がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究室, 主席研究員 (60260254)
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究室, 研究員 (80581793)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 神経芽腫 / TrkB / ALK / ShcC / 創薬 |
研究概要 |
小児がんの中で、今なお最も難治性の高リスク神経芽腫の新しい治療薬開発を目指して、以下の研究を行った。 インシリコ・オートドック・スクリーニング法を用いて、TrkB受容体のBDNF結合領域を標的とする300万個の低分子化合物から、7個の阻害剤を同定し、それぞれのIC-50を明らかにした。マウスを用いた毒性試験では最大投与量でも毒性は見られなかった。また、同様の手法でALKとShcCが結合する領域2か所に結合する低分子化合物のスクリーニングを行い、それぞれ5個と3個の殺細胞効果を有する化合物を同定した。これらはアポトーシスを誘導したが、p53の活性化、AKTの抑制が見られた。 一方、我々が神経芽腫cDNAプロジェクトから同定した高リスク神経芽腫に高発現するNLRR1新規膜蛋白質に対する単クローン抗体の同定に成功し、これが神経芽腫細胞の増殖を抑制することを明らかにした。NLRR1ノックアウトマウスを作成し、一部のホモ欠失マウスは胎生致死していること、生まれたマウスの成長は抑制されることが判明した。 NCYM遺伝子は、MYCNオンコジンの cis-antisense geneとして読まれ、長い間large non-coding RNAと考えられていたNCYM蛋白質はヒトおよびチンパンジーのみにしか無く、MYCN蛋白質の安定化に寄与していることが明らかになった。そこで、ヒト神経芽腫に近いマウスモデルを作成するために、NCYMトランスジェニックマウスを作成し、既存のMYCNトランスジェニックマウスとのダブルトランスジェニックマウスを作成した。それぞれから発生した神経芽腫組織を収集し、それぞれのヒト神経芽腫サブタイプとの比較をアレイCGHや次世代シーケンサーを用いて行なう準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫の標的分子に対する低分子化合物のスクリーニングは、これまでの予定どおりTrkB、ALK、ShcCを対象に順調に進んでおり、300万個の中から具体的な阻害剤候補が見つかり、アポトーシス誘導の下流シグナルの一部が明らかになってきた。 神経芽腫細胞の増殖に抑制的に働くNLRR1単クローン抗体の同定も確実なものになり、安定した抑制効果が得られている。今後の課題は、in vitroの研究からin vivo研究への移行であるが、それを行なうための大量の抗体確保が大きな問題となっている。しかし、研究全体の計画はほぼ順調に進んでいる。 上記のオリジナルな新薬候補の効果をスクリーニングするために、NCYM/MYCNダブルトランスジェニックマウスの継続的作成と、ゼノグラフトを用いた抗がん剤スクリーニング系の安定した供給が必要である。このin vivoスクリーニング系の確立はほぼ予定どおり進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
同定した低分子化合物の神経芽腫細胞増殖阻害剤としての分子機構をさらに明らかにする。このために、細胞内シグナル伝達機構の解析をさらに進める。また、他の抗がん剤との併用効果に関しても、まずin vitroの系において実験を進める。 NLRR1抗体に関しては、NLRR1との結合部位をエピトープマッピングにより明らかにする。また、NLRR1が膜貫通領域において切断され、可溶性フラグメントができている可能性があり、その確認実験を行なう。 NCYM/MYCNダブルトランスジェニックマウスに発生した神経芽腫を用いた抗がん剤スクリーニング実験を行い、既存のMYCNトランスジェニックマウスの神経芽腫に対する効果と比較する。また、両者の神経芽腫ゲノム解析を行い、ヒト神経芽腫サブセットとの関連性を検討する。
|