研究課題/領域番号 |
24249062
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00146672)
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研究分担者 |
小島 勢二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20313992)
西江 渉 北海道大学, 大学病院, 講師 (20443955)
秋山 真志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60222551)
阿部 理一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60344511)
藤田 靖幸 北海道大学, 大学病院, 助教 (80374437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表皮水疱症 / 造血幹細胞移植 / iPS細胞 / 17型コラーゲン |
研究概要 |
①ヒト幹細胞由来表皮角化細胞の促進因子の検討:免疫不全NOGマウスを用いた異種移植系を用いて、角化細胞への促進因子(HMGB1、CTACK等)を添加したところ、通常の異種移植系と比較して創傷治癒の促進が観察され、donorのヒト基底膜蛋白の発現確認割合が増加した。また、患者団体の協力を得た上で、当該施設および全国の表皮水疱症患者33名より血清を採取し、ケモカイン解析を行ったところ、HMGB1においては健常人と比較して有意に血清濃度が上昇しており、病型や重症度と相関していた。一方CCL28は患者の重症度と逆相関し、CCL27およびCCL19,21は明らかな相関を認めなかった。 ②治療対象患者の条件策定および新規診断確定手技の確立:名古屋大学小児科,名古屋大学皮膚科と共同し,表皮水疱症患者に対する幹細胞移植療法の自主臨床試験を名古屋大学病院倫理審査委員会に提出した。治療対象となり得る患者の条件を規定し、新規診断手法 および未知なる表皮水疱症の発症機序を探索した。当該施設に通院する若干名の患者に対して、診断確定,および罹患範囲・合併症を検討しエントリーの適応を評価したが、現時点で該当する患者は存在しなかった。 ③iPS細胞由来造血幹細胞を用いた表皮水疱症の治療:17型コラーゲンヒト化マウスを移植対象とし、マウスiPS細胞由来血球系前駆細胞を移植したところ、移植後200日の時点で生存率は約50%となり、未治療群と比較して生存予後の改善傾向がみられた。移植後の上皮化皮膚においては、RT-PCRにて2匹にわずかなマウス17型コラーゲンmRNAの発現が確認されたが、現時点で明瞭なマウス17型コラーゲンの発現を免疫蛍光抗体法で確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮水疱症マウスに対する幹細胞移植実験においては、移植対象となる17型コラーゲン欠損マウスの確保の点では当初の研究計画が遂行困難になっているが、当初の予定通り移植レシピエントを17型コラーゲンヒト化マウスに設定したことで研究を遂行できている。ヒト小児への幹細胞移植でみられるように経骨髄投与による移植が効率的であることが示された。また、iPS由来造血系前駆細胞を作成し、17型コラーゲン欠損マウスやヒト化マウスに対してiPS細胞由来造血幹細胞移植を進めることができており、当初の研究計画は概ね順調に遂行されていると考える。一部の移植後マウスでは欠損遺伝子の発現が確認されている。これらの知見をもとに、ヒト表皮水疱症における幹細胞移植療法の新たな可能性を検討することが可能になった。 また、マウスで示された既知の分化促進因子が、ヒト幹細胞においても同様に有効である基礎的データが示された。世界的にも最大規模の患者サンプル数を用いて表皮水疱症患者の血清解析を引き続き進めている。劣性栄養障害型表皮水疱症患者血清中で上昇すると既報告されているHMGB1において同様の結果を得ているが、さらにCCL28など他のケモカインや病型における検討を進めることができている。 表皮水疱症患者に対する幹細胞移植療法の臨床応用(自主臨床試験)に関しては、プロトコールや適格基準を策定して倫理審査委員会に提出済みであり、協議中である。複数の問題点が浮かび上がっており、現在さらなる協議を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
①幹細胞移植の条件検討:マイクロアレイ解析にて複数同定された、角化細胞への分化促進候補因子について、ヒトやマウス病変部皮膚・健常部皮膚および造血幹細胞での発現を検討し、in vitroにおけるchemotaxis assayおよび分化誘導実験にて詳細を検討する。ま た、これらの因子を併用/阻害した移植実験を施行し、in vitroにおける意義も検討する。 ②ヒト幹細胞由来表皮角化細胞の促進因子の検討:引き続き、異種移植系を用いてヒト幹細胞における表皮水疱症/角化細胞への分化を検討する。in vivoイメージング解析等も利用して生体内での幹細胞の挙動を検討する。また、引き続き患者団体の協力を得た上で、全国の表皮水疱症患者血清のケモカインを含めた関連因子の発現を検討する。 ③治療対象患者の条件策定および新規診断確定手技の確立:表皮水疱症患者に対する幹細胞移植療法の臨床応用(自主臨床試験)に関して、病型を同定されない表皮下水疱 症患者に対しては次世代シーケンス技術を応用して原因遺伝子を確定し、新規診断手法および未知なる表皮水疱症の発症機序を探索する。 ④iPS細胞由来造血幹細胞を用いた表皮水疱症の治療:17型コラーゲン欠損マウスおよびヒト化マウスを用いて、引き続きiPS細胞/ES細胞由来造血系前駆細胞移植の研究・検討を推進する。iPS細胞由来角化細胞、正常マウスiPS細胞からin vitroで直接分化誘導された角化細胞、従来の骨髄移植によって得られた骨髄由来角化細胞および正常角化細胞において、分子生物学的性質および細胞動態を、マイクロアレー法やproliferation assay、フローサイトメトリー法等にて比較する。以上の検討を踏まえて、ヒトiPS細胞を用いた幹細胞療法の応用を見据えた基礎を確立する。
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