これまでに、多くの研究により、ストレスに伴って神経細胞では構造可塑的な変化が生じることが報告されている。本研究の目的は、我々の作成した、周期的なうつ病様エピソードを呈する気分障害モデルマウスを用いて、輪回し行動量を継時的に観察し、うつ病様エピソードの基準を満たした後に脳を摘出し、ゴルジ法等の染色を行い、気分障害との関連が疑われる脳部位の形態学的検討を行うことによって、うつ状態に伴う神経細胞の形態学的変化を探索することである。神経細胞の形態解析に際しては、樹状突起の長さ、数、分岐、スパインの形態と数などを計測し、うつ病様エピソード中にこれらのパラメーターが変化するかどうかを明らかにする。更に、気分障害モデルマウスにおいてストレス負荷を行い、ストレスによりうつ病様エピソードが誘発されるメカニズムについて、神経可塑性仮説の観点から、検討を行う。これらの目的のため、モデルマウスのうつ状態、寛解期を、輪回し行動量の測定を元に判定し、各々の状態にあるマウスにおいて、脳のサンプリングを行った。得られた切片を用いて、定量的な形態解析を行うため、必要なソフトウェアをセットアップすると共に、条件検討を行った。更に、気分障害モデルマウスにおいて、ストレス負荷がうつ病様エピソードの誘発におよぼす影響を検証するため、ストレスの程度を反映するコルチコステロン濃度をエンザイムイムノアッセイ法を用いて測定し、ストレス負荷実験における条件検討を進めた。
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