研究課題
本研究では次世代シークエンサーを用いて肝癌多段階発癌メカニズムの解明を試みた。早期肝癌47例、古典的肝癌105例及び背景肝についてそれぞれエクソーム・RNAシークエンスを行い包括的発現解析・コピー数解析・融合遺伝子・遺伝子変異について統合解析を行い、肝発癌・進展における責任遺伝子を同定した。早期肝癌における遺伝子発現プロファイルは古典的肝癌よりもむしろ慢性肝疾患に近く、染色体変化も古典的肝癌と比較して有意に少なかった。また、1検体あたりの融合遺伝子数及び遺伝子変異数も早期肝癌で有意に少なかった。遺伝子変異はCTNNB1、CSMD3、AXIN1、 COL11A1、TSC2、ATM が既に早期肝癌で認められた一方でTP53、ARID2、ALPK2の変異は古典的肝癌で有意に高頻度であった。遺伝子変異をパスウェイ毎に分類するとWNT経路、p53/RB経路、MLLが早期肝癌の段階で、SWI/SNF複合体、AKT/PI3K経路が古典的肝癌のみで変化していたが、WNT下流遺伝子及びp53/RB関連の細胞周期遺伝子の発現上昇は早期肝癌では認められず、各経路の遺伝子変異を伴う古典的肝癌のみで活性化されていた。また、TERTの発現上昇が融合遺伝子(SLC12A7-TERT)、HBウィルスのプロモーター領域への組み込み、プロモーター領域の変異、TERTを含む染色体領域5p15.33の増幅により早期肝癌の段階で認められた。早期肝癌はCTNNB1、TP53などのドライバー遺伝子の変異が比較的高頻度に認められたにもかかわらずその下流遺伝子の発現量は変化していなかった。これらの遺伝子経路が活性化するためにはドライバー遺伝子変異に加えて染色体変化、SWI/SNF複合体やAKT/PI3K経路などの他のゲノム変化が加わり古典的肝癌へと進展してゆくものと推察された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Hepatobiliary Pancreatic Science
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