研究課題/領域番号 |
24249070
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤 芳樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00243220)
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研究分担者 |
西 宏之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00529208)
吉川 泰司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40570594)
宮川 繁 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70544237)
福嶌 五月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心不全 / 筋芽細胞シート / プロスタグランジン製剤 / 拡張能 / 人工心臓 |
研究概要 |
筋芽細胞シートから分泌されるサイトカインは肝細胞増殖因子、VEGF,bFGF,Thymosinβ4等が知られており、特に、肝細胞増殖因子は不全心の線維化を抑制することが知られている。筋芽細胞シートを移植したラット慢性期梗塞心において、線維化をコントロールする因子を精査したところ、筋芽細胞シートを移植した心臓では、MMPの発現上昇、RECKの発現の低下、Smad-TGFβ系の制御により、線維化が抑制されていることが示唆された。また、筋芽細胞シートを移植した不全心においては、PV-loop法にて、収縮能のみならず拡張能も向上していることが判明した。筋芽細胞シートのパラクライン効果には、プロスタグランジンの作用が関連しており、筋芽細胞シートが虚血、および機械的刺激を受けるとプロスタグランジンが産生され、レシピエント心、移植された筋芽細胞シートのIPレセプターを有する細胞に作用し、様々なサイトカインが分泌されることが示唆された。このプロスタグランジンを製剤化し、徐放能をもたせ、拡張型心筋症ハムスター、拡張型心筋症イヌに投与したところ、線維化の抑制、血管新生に伴って収縮能の向上のみならず、拡張能の向上も認め、これらの薬剤は線維化抑制により心拡張能の改善をもたらしたものであることが示唆された。特に拡張型心筋症ハムスターにおいては、線維化抑制だけではなく、αsarcoglycanを中心とした心筋収縮蛋白の維持効果も観察された。また、吸収糸で作成した左室形成デバイスと新規プロスタグランジン製剤のコンビネーション治療の臨床的有効性を、イヌ心筋梗塞モデルを用いて検証した。コンビネーション治療においては、単独治療に比して、線維化の抑制、左室収縮末期容量の縮小化、心機能の改善、血管新生による血流増大を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋芽細胞シートによる不全心の拡張能の改善が分子生物学的、機能的に証明されており、また、いわゆる薬剤治療である筋芽細胞シートの心筋再生のメカニズムを解明しつつ、その知見をもとに、パラクライン効果の元となる新規薬剤を開発することが可能となった。上記のような筋芽細胞シートを模倣する可能性のある薬剤を開発し、同薬剤を不全心に投与することにより、不全心の線維化の抑制、それに伴う拡張性の向上が大動物心不全モデル、小動物心不全モデルにて証明された。ヒトの心組織の線維化と拡張能の関連性に関する検討が依然不十分であるが、今後その展開を予定しており、他の検討項目については、全体的に概ね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、筋芽細胞シートのもつ線維化の抑制のメカニズム、心臓の拡張性の解析を行い、筋芽細胞シートで得られた知見から新規薬剤を開発し、大動物・小動物心不全モデルを用いた線維化、不全心の拡張性の検討を行ってきたが、実際のヒト心不全心筋組織を用いた組織自体の拡張性の定量化の方法および拡張性に影響を与える細胞外基質の詳細な解析は不十分であり、今後、ヒト検体を用いた上記研究を進めていく予定である。同研究を遂行していく上で、問題となる点は、組織自体の拡張性を実際の心筋組織を使用していかにして定量化するかであるが、当大学には、組織の硬さを定量化する機材が整備されており、当機材を用いて、心不全組織の硬さを定量化する予定である。
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