研究課題/領域番号 |
24249071
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前原 喜彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80165662)
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研究分担者 |
米満 吉和 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40315065)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 助教 (70380392)
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 助教 (80325448)
岡本 龍郎 九州大学, 大学病院, 助教 (80568626)
池田 哲夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60585701)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中皮腫 / バイオナイフ / ウイルス / アリムタ / NF-kB / 臨床試験 |
研究概要 |
初年度は、特に臨床試験を前提として、「臨床的に実施可能なバイオナイフ投与方法とそのレジメの確立」行うために必要な情報を、小動物で得ることを目的とした。 まず、細胞株H226を使用した検討にて、コントロールウイルスの感染のみでuPAは転写量・蛋白双方の発現が増強するが、バイオナイフの膜融合により、この作用は増強されることを確認した。この効果はNF-kB阻害剤PDTC、および細胞質内RNAセンサーヘリカーゼRIG-Iのdominant negative inhibitorであるRIG-ICを発現するバイオナイフでは消失することから、RIG-I/NF-kB系に依存していることが証明された。このuPA発現増強作用により、中皮腫ではバイオナイフの効果がさらに高まっていると考えられる。 ヌードマウス胸腔内にルシフェラーゼ遺伝子を安定的に導入したH226を注入。播種性腫瘍塊を形成した後、GFPを発現するバイオナイフを胸腔内投与した。以後経時的に発光ライブ・イメージングを実施した。コントロールウイルス投与の場合は次第に発光強度が増加するが、バイオナイフ投与群では、次第に発光強度が減弱した。さらに、ヌードマウス胸腔内にH226を注入し播種性腫瘍塊を形成した後、単回、3回、6回(/週)と、GFPを発現するバイオナイフを投与した。投与回数が増えるごとに、有意に生存期間が延長することが明らかになった。今後はこれらバイオナイフと中皮腫の標準化学療法剤、特にpemetrexed(アリムタ)との相加・相乗作用に関する詳細なメカニズムを解析する。既に消化器がんモデルにおいては、バイオナイフによる腫瘍の融解とバイオナイフそのもののアジュバント作用により、腫瘍そのものの消失だけでなく抗腫瘍免疫の成立を示唆するデータを得ており、この観点からも免疫学的検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にバイオナイフの生物活性の最適化は終了しており、本研究計画では3年間の研究期間内に、(1)臨床現場での使用を前提とした治療系の体系化、(2)大動物(ブタ)、小動物(マウス)等におけるバイオナイフの安全性試験を実施、さらに(3)既存治療(化学療法剤)による治療効果の増強作用の検証と、その分子メカニズムを明らかにする、ことを目標としている。既に一部では解析を開始しており、有望な結果が得られつつある。初年度は、主として治療系の確立を完成させ、細胞株およびマウスを使用した検討が中心となった。概ね実験計画は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目および3年目は、1年目の研究を継続しつつ、主として臨床試験を見据え、外部のCROと連携してバイオナイフの安全性試験を実施すると共に、ブタを用いた投与法のfeasibility studyを実施する。これらの成績をもって、平成26年度中に臨床研究申請を実施する。特にバックアップラボ(九州大学医系キャンパス内コラボステーションII6階P2実験質)を整備し、臨床研究時に必須である生体内動態、バイオマーカー(胸腔内uPA活性等)の測定用の手順書(SOP)を整備する。このSOPのもとウェットランを実施、バリデーションを完成させる予定である。
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