研究課題
新しいがん治療法としてのバイオナイフの開発と臨床応用我々は基盤特許群を有する「センダイウイルスの組換え技術」を応用したM遺伝子欠失rSeVをベースに、多くの悪性腫瘍が発現するウロキナーゼ(uPA)を標的化し、膜融合に重要なF遺伝子の細胞質内ドメインを遺伝子操作することにより、膜融合活性(=腫瘍殺傷能力)を高めた製剤を開発し、これを「バイオナイフ(BioKnife)」と命名した。今後の臨床試験を見据え、外部のCROと連携してバイオナイフの安全性試験を実施すると共に、動物を用いた投与法のfeasibility studyを実施した。マウス等を用いた投与法のfeasibility studyではCDDP+pemetrexedの投与下に、注入実験を行い、投与前、投与直後における侵襲度について、に詳細な検討を実施した。新しい腹膜播種治療法の開発我々は最近、マウス腹腔内における免疫系細胞の解析を行っている過程で、偶然低頻度ながらactiveな造血が行われていることを発見した。そしてそのniche構成細胞について膜結合型SCF発現を指標に検索したところ、reticular/ vascular nicheを構成する細網状細胞(CAR: CXCL12- abundant reticular cells、Immunity 2006)が散在性に分布し、その一部に接する細胞クラスターで「異所性造血」が行われていることを突き止めた。さらに高頻度に腹膜播種を形成するマウス大腸がん細胞株CT26はCXCL12の受容体CXCR4を発現しており、腹腔内投与後翌日(1日後)には、既に腹膜CAR細胞周辺に~0.5 mmに達する細胞集積による微小結節を形成すること、そしてこの腹膜播種はCXCR4 antagonist (AMD3100)ならびに活性中和抗体にて強く阻害されることから、腹膜におけreticular nicheが播種性悪性腫瘍の足場となり、がん幹細胞として振る舞わせる原因であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本内容に関連して腹膜播種の新しい治療法について新しい治験を論文投稿中であり、概ね順調に研究は推移している。
がんの播種に対する効果的な治療開発のため、現在以下の検討が同時に進行している。1)「センダイウイルスの組換え技術」を応用した悪性中皮腫の胸膜播種治療の臨床試験にむけての前臨床試験2)消化管腹膜播種病変に対する新しい治療法の開発今後は消化管腹膜播種治療についても臨床試験を見据えた開発を行って行く予定。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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