研究課題/領域番号 |
24249073
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
若林 俊彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50220835)
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研究分担者 |
夏目 敦至 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362255)
柳川 弘志 慶應義塾大学, 理工学部, 訪問教授 (40327672)
古山 浩子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50402160)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核酸医療 / 薬剤送達 |
研究概要 |
がん領域において新規抗がん剤が開発される中、non-responderが必ず存在する。我々はその解析から抗がん剤耐性因子の同定に成功した。RET finger protein (RFP)、O6-methylguanine DNA-methyltransferase(MGMT)の抗がん剤耐性因子を見いだし(特許取得)、また、それを制御する核酸(small-interference RNA)を効率よく輸送する技術の開発を進めてきている。また、腫瘍(がん)に1mm以下の精度でsiRNAナノパーティクルを1mm以下の誤差で注入する手術ロボットをアジアで初めて導入し、臨床試験としてパーキンソン病症例でロボットの安全性を確認している。MGMT核酸医薬は、ラット、ブタを用いた前臨床試験を済ませた。本課題では、この革新的核酸医療の早期実用化のために、siRNAナノパーティクルを本学医学部附属病院先端医療・臨床研究支援センターバイオマテリアル調整部門においてGMP準拠で製造し、流体力学を応用した送達方法で悪性腫瘍内に投与する医師主導型臨床研究を2012年度内に実施することを第1目標とする。siRNAを用いたがんに対する核酸治療臨床応用は、国内初となり、siRNAを用いた核酸医療開発を掲げている多くの製薬会社に注目されることになる。第2目標として、2013年以降はABCDナノパーティクルを用いて、ナノパーティクルの改良と薬剤送達技術の改良を行う。siRNAは国際的に新しい薬剤と期待されつつも、有効でかつ特異的なナノパーティクルおよび送達技術が十分開発されていないことが問題である。本研究では、世界でも例を見ないsiRNAナノパーティクルの臨床応用をいち早く実施し、問題点を明らかにしたうえで、より効率的な導入、標的とする抗がん剤耐性因子を抑制することで抗がん剤の作用を増強させ、化学療法の奏効率の上昇に寄与するとともに、使用する抗がん剤の低減によって副作用を減らし、患者のQOLの向上に寄与し、経済市場創出効果および医療費削減につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性腫瘍において、新規抗がん剤が次々に開発されているが、その臨床効果が認められるのは半数以下の患者とされる。その原因のひとつに抗がん剤耐性因子の発現がある。既に、我々はバイオマーカー探索から、RET finger protein (RFP) (Shimono, Y et al. J. Biol. Chem. 2003; Kato, T et al. Cancer Res. 2009; Tsukamoto, H et al. Cancer Sci. 2009など)、 O6-methylguanine DNA-methyltransferase(MGMT)(Kato T, et al. Gene Ther, 2010)の抗がん剤耐性因子を見いだし、また、それを制御する核酸(small-interference RNA)を効率よく輸送する技術の開発を進めている。また、腫瘍(がん)に1mm以下の精度でsiRNAナノパーティクルを注入する手術ロボットをアジアで初めて導入し、学内倫理委員会承認後、臨床試験にて安全性を確認中である。 すでに、ラット、ブタを用いた前臨床試験を済ませた。この革新的核酸医療の早期実用化のために、北海道システムサイエンス社が製造する対抗がん剤耐性分子siRNAナノパーティクルを本学バイオマテリアル調整部門の産学連携ユニットにおいてGMP準拠で製造し、流体力学を応用した送達方法で悪性腫瘍内に投与する医師主導型臨床研究を、POCクリニカルリサーチ(CRO)のモニタリングのもと、計画している。siRNAを用いたがんに対する核酸治療臨床応用は、国内初となり、siRNAを用いた核酸医療開発を掲げている多くの製薬会社に先行する。 siRNAは国際的に新しい薬剤と期待されつつも、有効でかつ特異的なナノパーティクルおよび送達技術が十分開発されていない。本研究では、世界でも例を見ないsiRNAナノパーティクルの臨床応用をいち早く実施し、より効率的な導入、送達技術の開発を行い、problem-orientedな革新的臨床研究を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
今後はバイオマーカー探索により抗がん剤耐性因子として我々がシーズとして有するMGMTとRFPを悪性腫瘍に対する前臨床試験と臨床試験を行うことを目的とする。MGMTに対するsiRNA核酸はナノパーティクルをGMP準拠で、本学のバイオマテリアルセンター産学連携ユニットで製造する。2011年に名古屋大学に導入された(株)レニショー社製定位手術ロボットNeuroMateを用いて、脳腫瘍内にConvection-enhanced delivery法でナノパーティクルを局所注入する。試験デザイン概略は、第1相臨床試験。対象;20歳以上の再発悪性神経膠腫患者10例。主評価項目:安全性。副次評価項目:6ヶ月無増悪期間、奏功率。 RFPはがん細胞内でHDAC1、NF-Yといった転写調節因子と相互作用し、TBP-2 遺伝子(Thioredoxin Binding Protein-2;ROSを除去する機能を持つ Thioredoxinに結合しその機能を阻害する)のプロモーター上で複合体を形成し、その発現を抑制している。RFPのノックダウンによってRFP/HDAC1/NF-Y複合体形成が阻害され、TBP-2の発現が増加し、その結果、がん細胞が酸化ストレスに対して感受性となり、ひいてはROSを発生させる抗がん剤(シスプラチンなど)に対しても感受性となることが明らかにしている。本研究期間中に、RFPsiRNA核酸の非臨床試験を実施する。
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