研究課題
一般住民健診に基づく前向きコホート研究を行うことによって、わが国の視覚障害および失明の主原因となっている加齢黄斑変の発症に関わる危険因子、防御因子を包括的な健診成績の中より明らかにするとともに、疾患と環境要因、遺伝子要因との関係を系統的に解析し、より効果的・定量的な予防法を構築し、久山町住民のみならず、国民全体の視力低下・失明の予防に有用なエビデンスを提供することを目的とした研究を行った。また、患者DNAサンプルの約半数をゲノムワイド関連解析によるゲノムスクリーニングを行うために、マイクロアレイを使用し網羅的な一塩基多型遺伝子型の同定を既に行った。 さらには、得られた匿名化臨床情報の解析から抗VEGF治療薬の治療効果反応性における個人の表現型を決定し、これらの患者群を治療効果反応良好群と治療効果反応不良群とに選別を行った後に、ゲノムワイド関連解析を行いたスクリーニングをおこなった。AMD患者サンプルのゲノムワイド関連解析により抽出した疾患感受性遺伝子であるTNFRSF10A遺伝子について、正常網膜における局在を検討したところ、網膜色素上皮細胞で恒常的に発現していた。次に、培養ヒト網膜色素上皮細胞を用いて、SNP (rs13278062)による、転写活性および、核たんぱく結合能への影響を評価するため、ルシフェラーゼアッセイおよび、ゲルシフトアッセイを行った。リスクアレルを持つ細胞では、転写活性、核たんぱく結合能は有意に低下しており、また、TNFRSF10Aの遺伝子およびタンパクの発現量は、有意に減少した。以上より、網膜色素上皮細胞においては、rs13278062のアレルの違いにより、TNFRSF10Aの転写調節、ならびに発現量が変化することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
九州大学眼科学教室において久山町健診に参加し、3,000人以上におよぶ住民を追跡しデータを集め、その結果得られた長期にわたる眼科の臨床データを個々の内科健診データおよび食事や運動習慣などの生活習慣データ、遺伝子解析から得られた遺伝子データ、剖検から得られた剖検データと合わせてデータベース化し解析できるようにするのが目標であったが、当初の予定どおり、得られたデータはすべて安全に保存され解析できるための専用コンピュータをおき、得られた情報はデータベース化してコンピュータに保存し高度なセキュリティー管理下におき、解析可能な状態とした。また、ゲノムワイド関連解析のための一塩基多型同定を行い、得られた遺伝子型情報を用いたスクリーニングが既に終了した。また、来年度に行う予定である追試研究に必要な臨床情報とDNAサンプルの収集も既に終え、当初の予定通り進展している。
これまでに引き続き、大型計算機システムによる大規模多変量統計解析を行うことで、眼疾患と全身疾よび環境要因との関係を多次元的に解析し、リスクレベルに応じて疾患を予防するための因子を明らかにするとともに、疾患と生活習慣、環境要因および遺伝的因子との関係も多次元的に解析する。上述のゲノムワイド関連解析で得られた結果をもとに、強い関連を示したSNPについて、スクリーニングで用いられた集団とは独立した集団での再現性を確認するために、残りの患者群を用いて追試研究を行う。追試研究の後にはゲノムワイド関連解析と追試研究の統合解析を行い、SNPの治療効果反応性への関連について統計学的検定を行う。さらには、抗血管新生薬との関連が確認されたSNPについては、治療応答性に影響する機序を明らかにするために機能解析を行うことを予定している。AMDの早期病変発症には、網膜色素上皮細胞中のミトコンドリアの機能低下やリポフスチン集積に対する抗酸化処理能低下による活性酸素種の蓄積が関与していることが報告されている。今年度は、培養網膜色素上皮細胞を用いて、TNFRSF10Aの酸化ストレス下における機能的役割について検討する。過酸化水素刺激によるTNFRSF10Aの発現変化を検討する。特異的siRNAによりTNFRSF10Aの発現を抑制し、過酸化水素刺激により誘発される酸化/還元型グルタチオンが変化するか否かを検討する。また、TNFRSF10KOマウスも飼育中であり、加齢や紫外線暴露下での網脈絡境界の病理がTNFRSF10遺伝子発現により変動するか否かについても明らかにしていく。
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