研究課題
【目的】 腫瘍随伴性マクロファージ(TAM)は、腫瘍に対する免疫応答を抑制することが報告されているが、口腔扁平上皮癌(OSCC)における局在や機能については不明である。そこで本研究では、OSCCにおけるTAMの局在と臨床所見との関連について検討した。【対象と方法】 未治療のOSCC患者40例の切除標本を用いて免疫組織化学染色法にてTAM (CD163、CD204) 、活性化リンパ球(CD25)、TAMが発現するとされている免疫抑制関連分子(IL-10、PDL1)の局在を検索した。さらに、二重蛍光染色法にてTAMのIL-10産生細胞を同定した。TAMと臨床所見との関連について統計学的解析を行った。最後にTAMのサブセット (CD163+CD204-、CD163-CD204+ 、CD163+CD204+) の有無と局在を確認した。【結果】 CD163およびCD204は腫瘍辺縁部に著明な浸潤を認め、さらにCD204のみ腫瘍実質内にも浸潤を認めた。CD25およびCD69陽性細胞は腫瘍辺縁部にびまん性に認めた。二重蛍光染色法ではCD163-CD204+TAMとCD163+CD204+TAMが腫瘍浸潤先端部と腫瘍内部に広く局在を認め、CD163+CD204-TAMは腫瘍辺縁部と周囲の線維成分に局在を認めた。さらにこれらの細胞集団と免疫抑制関連分子との局在を検索したところ、IL-10およびPDL1はCD163と局在が一部のみ一致していたが、CD204とは局在がほぼ一致していた。臨床所見との関連については、CD204のみ浸潤様式(YK分類)と正の相関を認めた。また、CD25陽性細胞数はCD204のみ負の相関を認めた。【結論】以上より、CD163よりむしろCD204がTAMの性質をより反映していることが示唆された。また、OSCCにおけるTAMの機能については、免疫を強力に抑制するIL-10やPDL1を発現し、腫瘍の浸潤・転移に関与する可能性が考えられる。
3: やや遅れている
現在、免疫細胞が発現する免疫チェックポイント分子の同定を行っているが、腫瘍からのアプローチが十分ではなく、論文作成がやや遅れている。
腫瘍からの研究も積極的に進め、オーダーメイドワクチンの確立につながるものにしたい。また臨床所見との関連についても詳細に検討していく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件)
World J Surg Oncol
巻: 13 ページ: 67
10.1186/s12957-015-0459-z.
Oncol Rep
巻: 33 ページ: 2161-2168
10.3892/or.2015.3838.
巻: 13 ページ: 225
10.1186/s12957-015-0644-0.