研究課題/領域番号 |
24249100
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
山田 律子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (70285542)
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研究分担者 |
千葉 由美 横浜市立大学, 医学部, 教授 (10313256)
池田 学 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60284395)
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター, 東京都健康長寿医療センター研究所(社会科学系), 専門副部長 (10271561)
池田 和博 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (10193195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症の原因疾患 / 認知症の重症度 / 高齢者 / 摂食・咀嚼・嚥下障害 / ケアスキル |
研究実績の概要 |
山田班:レビー小体型認知症(DLB)高齢者11名の遡及調査で、食事摂取量の変動係数を軸に分類した結果、変動あり群5名(16.7-28.8%)、改善する変動群3名(9.0-22.3%)、変動なし群3名(0.0-7.4%)で、変動の理由は妄想、認知機能の変動、環境の変化であった。摂食嚥下障害は先行期・準備期81.8%、口腔期54.5%、咽頭期36.4%認めた。最期まで経口摂取した認知症高齢者の家族76人の調査では、家族の食事満足度は98.0±5.5%と非常に高く、看取り満足度との相関を認めた(ρ=0.733、P<.001)。 池田和博班:軽度認知症高齢者の口腔内状態は歯肉発赤100%、舌苔77.8%、頬の膨らまし不可33.3%を認めた。口腔セルフケアでは「歯を小刻みに磨いていない」88.9%等と課題が多いものの、ブラッシング支援によりPCRは90.0%から75.0%に改善した(p=.028)。 池田学班:アルツハイマー病(AD)の重症度別の食行動を検討した(英文誌の再査読中)。AD 220名の食行動異常をCDR別に検討し、健常高齢者と比較した。初期から食欲が変化し、食習慣の変化と食嗜好の変化は中期で高頻度にみられ、嚥下障害は進行期に目立った。ADの重症度別の味覚異常を検討した(英文誌の再査読中)。 千葉班:全国病院約8,400件に郵送法による質問紙調査を行った結果、AD725名、DLB51名、前頭葉側頭葉型認知症(FTD)32名、血管性認知症(VD)129名で、現在誤嚥性肺炎を有する者、唾液や食事でむせる者、有熱者(37℃以上)の割合を見ると、DLBは有熱者が多い傾向にあった。 平野班:2年の縦断調査データフォーマットを構築した。全員に嚥下造影検査等の実施は倫理上困難なため、簡易嚥下機能評価として「改訂水飲みテスト」「咳テスト」等で調査を実施し、ADを中心とした解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、当初の予定通り4つの課題を明らかにすると共に、研究を進める過程で必要になった調査も追加して実施した。 課題1「DLBの摂食・咀嚼・嚥下障害の特徴に関する遡及調査」に加えて観察調査も実施し、平成26年度は招待講演や書籍を通して公表すると共に、現在、連携研究者の長瀬亜岐が認知症高齢者の摂食・咀嚼・嚥下障害の特徴に関する学位論文を作成中であり、順調に進展している。 課題2「認知症末期にある高齢者に対する食事ケアスキルの有効性と汎用性の検討」では、平成26年度も平成25年度に引き続き重点を置いて研究を進めてきた。当初の計画に加えて、新たに最期まで口から食べるケアを受けた認知症高齢者の家族を対象者として、食事ケアの満足度に関する調査を追加したほか、これらの成果を招待講演、学会発表、論文、書籍等で公表すると共に、研究協力者の大久保抄織と辻幸美が学位論文として成果をまとめたことから、当初の計画以上に進展していると評価できる。 課題3「認知症の原因疾患別・重症度別にみた摂食・咀嚼・嚥下障害の研究」では、研究分担者である池田 学班、千葉由美班、平野浩彦班が研究成果を上げ、国内外での論文投稿、国内外での学会発表、招待講演などで研究の成果を多数公表し、順調に進展していると評価できる。 課題4「ケアスキルの成功率調査」は事例研究に止まったものの、「口腔機能の維持・向上とケアスキルに関する検討」に関して、池田和博班が招待講演や学会発表、論文などで公表するなど、順調に進展したと判断できる。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と総合判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、以下の4つの研究プロジェクトを推進していく予定である。 1.課題「咳テスト法の検証と認知症の原因疾患と重症度別にみた嚥下障害の特徴」では、千葉班と池田学班が熊本大学医学部附属病院嚥下障害診療センターとの共同研究として、咳テスト、嚥下造影(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)を含む研究計画が倫理委員会に承認され、熊本大学神経精神科で認知症の診断がある高齢者とその家族(代理人含む)100組以上を対象として,認知症高齢者への咳テストの妥当性・有用性を検証すると共に、認知症の原因疾患および重症度別の嚥下障害の特徴について分析する。 2.課題「終末期にある認知症高齢者に対するチームアプローチによる食事ケアの効果」では、終末期にある認知症高齢者と家族10組、および医師・看護職・介護職・理学療法士・作業療法士・支援相談員・管理栄養士の計46名を対象者として、終末期にある認知症高齢者に家族を含めた多職種による食事ケアを実施し、介入の前後で多職種や家族には自記式質問紙評価と認知症高齢者の状態像を評価し、チームアプローチによる食事ケアの効果を分析する。 3.課題「摂食・咀嚼・嚥下障害のある認知症高齢者のサルコペニアの特徴」では、昨今の研究動向を鑑みて、新たに追加する研究として、平成27年度は認知症高齢者のサルコペニアの特徴について国内外の文献レビューを行い、認知症高齢者の摂食・咀嚼・嚥下障害とサルコペニアとの関連、認知症の原因疾患・重症度とサルコペニアとの関係、サルコペニアの評価方法について検討する。 4.課題「認知症の原因疾患と重症度別にみた摂食・咀嚼・嚥下障害の特徴に関する縦断研究」では、経年的データを蓄積し、AD、VaD、DLB、FTLDのいずれかに診断された高齢者を対象に、摂食嚥下機能、栄養状態、食事ケアスキルなどの進行による変遷の知見を把握することを目的に縦断研究を行う。
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