研究課題/領域番号 |
24249100
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
山田 律子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (70285542)
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研究分担者 |
千葉 由美 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10313256)
池田 学 熊本大学, その他の研究科, 教授 (60284395)
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, その他 (10271561)
池田 和博 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (10193195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症の原因疾患 / 認知症の重症度 / 摂食・咀嚼・嚥下障害 / 咳テスト / 食事ケアスキル / 終末期 / サルコペニア / 味覚障害 |
研究実績の概要 |
1.認知症における疾患別の食行動障害に関して、専門外来を受診したアルツハイマー病(AD)高齢者32名と健常高齢者22名に、4基本味(甘・辛・酸・苦味)の検出および認知閾値を検査した。その結果、AD高齢者に有意な味覚異常が認められた。また、甘味を好む傾向と体重減少が高頻度で同時に認められた。 2.嚥下障害のスクリーニングとしての咳テストに関しては、認知症の原因疾患に関わらず一定の有用性が示されたものの、重症度や喫煙歴を加味した検討の必要性が示された。 3.終末期認知症高齢者へのチームアプローチに関するPre-Post Design研究に関して、介護老人保健施設に入所の終末期認知症高齢者とその家族10組と医師・看護職・介護職・理学療法士・作業療法士・支援相談員・管理栄養士の計40名を対象に、1年間にわたる食べる喜びを支えるチームアプローチを実施し、データ収集を終えた。 4.認知症高齢者のサルコペニアに関する国内外の文献レビューによって、その有病率は地域在住高齢者男性が13-25%、女性が12-24%に対して、認知症高齢者男性は67%、女性は49%と非常に高いこと、サルコペニアの改善・予防には運動と栄養の同時介入が効果的であるとの知見を得たことから、通所系サービスのサルコペニア予防の有効性を検討中である。 摂食・咀嚼・嚥下障害のある認知症高齢者のサルコペニアの特徴に関する研究では、身体機能障害の予測因子としてのSMI(skeletal muscle mass index)に注目し、軽度から重度AD患者を対象に、SMI低下の既知の関連因子も含めて口腔機能、嚥下機能を包括して検討した。その結果、SMIは認知症重症度に伴い低下する傾向が示された。さらに多変量解析の結果、SMI低下の関連因子には認知症重症度(CDR)、バーサルインデックス、BMI、下腿周囲径、嚥下機能に有意な関係を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、平成28年度までの継続研究も含む4つの課題を明らかにすると共に、研究を進める過程で必要になった新たな研究も追加して実施した。 課題1「嚥下障害スクリーニングとしての咳テストの検証と認知症の原因疾患と重症度別にみた嚥下障害の特徴」は、平成28年度までの継続研究であり、平成27年度は対象数が少ない傾向にはあったが、おおむね順調に進展しているといえる。 課題2「終末期にある認知症高齢者に対するチームアプローチによる食事ケアスキルの効果」も平成28年度までの継続研究であり、予定どおり、対象者のリクルートならびに、2つの介入の実施と、3時点での評価をすべて終えたことから、順調に進展している。 課題3「摂食・咀嚼・嚥下障害のある認知症高齢者のサルコペニアの特徴」では、国内外の文献レビューの他、平野班が新たに摂食・咀嚼・嚥下障害のある認知症高齢者を対象に調査研究を実施し、その成果を学会発表や招聘講演、論文として公表したことから、当初の計画以上に進展していると評価できる。 課題4「認知症の原因疾患別・重症度別にみた摂食・咀嚼・嚥下障害の研究」では、各研究班で成果を上げ、国内外での論文投稿、国内外での学会発表、招待講演などで研究成果を多数公表した。特に、池田学班による新たな研究として、ADでさえも明らかにされていない味覚異常と食行動との関連に関する研究で有意義な知見を公表したことは、当初の計画以上の進展もある。さらに、これまでの実績が評価され杉田玄白賞を受賞すると共に、池田和博班の研究成果の一つ「介護老人保健施設に入所する軽度・中等度認知症高齢者の口腔環境を良好に維持するための予防ケア」では、日本認知症予防学会から学会賞を受賞した。このことから、順調に進展していると評価できる。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と総合判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、以下の4つの研究プロジェクトを推進していく予定である。 課題1「認知症の原因疾患と重症度別の誤嚥性肺炎の特徴と、嚥下障害スクリーニングとしての咳テストの有用性の評価」では、一般病院へ入院した認知症高齢者14,052人の全国調査をもとに、認知症の原因疾患と重症度別の誤嚥性肺炎の有病率と関連要因を明らかにする。また平成27年度に引き続き、認知症高齢者と家族を対象者として、咳テストの妥当性・有用性について検証する。 課題2「終末期にある認知症高齢者への多職種チームアプローチによる食事ケアの効果」は、平成27年度に、終末期にある認知症高齢者とその家族10組と、医師・看護職・介護職・理学療法士・作業療法士・支援相談員・管理栄養士の計40人の多職種チームを対象者として、食事ケアに関する実施と評価に関するデータを1年間かけて収集した。平成28年度は、それらのデータをもとに分析し、多職種協働による食事ケアの効果を検討することで、今後の終末期にある認知症高齢者への食事ケアのあり方について検討する。 課題3「通所系サービスを利用する認知症高齢者のサルコペニアの実態」では、通所系サービスを利用する認知症高齢者50人と認知症ではない高齢者50人を対象者としてマッチングし、サルコペニアを測定し、その有病率と、咀嚼・嚥下機能を含めた要因について調査する。 課題4「認知症の原因疾患と重症度別の摂食・咀嚼・嚥下障害の特徴に関する縦断研究」では、認知症の原因疾患のうち、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭型認知症(FTD)のいずれかに診断された高齢者を対象者として、引き続き摂食・咀嚼・嚥下障害の特徴について縦断調査を行う。
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