研究課題
2013年9月にボリビア・アンデス、コルディレラ・リアルのチャルキニ峰周辺において、地形、土壌、水文、気候、植生などの自然環境と放牧活動などの社会活動について調査を行った。チャルキニ峰西カールでは、氷成堆積物の生成プロセスやモレーンの形成メカニズムを解明するため、堆積物や地形が調査された。また、氷河前面における土壌生成と物質移動の関係が検討され、凸状地形に比べ凹状地形で土壌発達がよいのは、凸状地形でより物質移動が盛んなためであると推定された。この地域の周氷河環境は、土壌の凍結融解が頻発する時期(冬季)が乾季と重なり、表層部の水分量が少なく、周氷河地形が効率的に行われていないことが推察された。気候については、エルアルト(ラパス郊外)の気温と露点温度が分析され、調査地域における亜熱帯高気圧の強まりと乾燥化が生じていることが明らかになった。放牧活動については、リャマ、アルパカ、羊について参与観察と住民への聞き取りが行われた。リャマと羊は主に肉の生産として、アルパカは毛の生産として放牧され、乳は羊のみが利用されていた。リャマとアルパカは好む牧草が異なり、アルパカのほうが湿った環境を好み、両者の交配種が生まれるのを嫌う牧畜民によって別々に放牧されていた。アルパカの毛は高値で取引されるため、交配種の拡散によって毛の質の低下を防ぐためである。近年の家畜放牧は、その労働環境の厳しさから若者の町への移住やジャガイモ農耕に移行する傾向が見られた。リャマ、アルパカ放牧から、牛、羊放牧や農耕への移行は近年の温暖化も影響していることが推測された。
2: おおむね順調に進展している
ボリビア・アンデス、コルディレラ・リアルのチャルキニ峰周辺において、地形、土壌、水文、気候、植生などの自然環境と放牧活動などの社会活動について調査を行い、この地域の自然と社会の特徴が明らかにされつつある。2014年の調査の成果は、日本地理学会春季学術大会(2015年3月、日本大学)にて、高橋、長谷川、山縣、水野、吉澤が発表をし、International Geographical Union 2014 Regional Conference (August 19, 2014: Krakow, Poland, Jagiellonian University)において水野が植生分布と氷河性堆積物との関係について発表をした。
これまで3年間、アンデスで調査を行ってきたが、その調査を継続するとともに、比較対象としてアフリカのケニア山で調査を行う。4年間の研究成果をまとめて日本語の書籍を出版するとともに、学術雑誌にも論文を投稿する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (7件)
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