研究課題/領域番号 |
24253002
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 幸弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50236329)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 雷放電 / 豪雨災害 / 予測 / モニタリング / 地上観測網 / 台風 / ダウンバースト |
研究概要 |
1) 観測網の整備・拡充:ベトナムの観測装置の設置を完了し、ミャンマー、モンゴル、マレーシアへの新規設置可能性について、相手国と協議した。前橋局の設置を完了し、関東地方の観測体制を完成させた。国内に4km間隔の稠密観測網を一時的に展開し、落雷時の静電場変動の多点計測に成功した。2) 落雷の解析法の改良:これまでのAVONの2点での観測データからの位置評定を、3点以上の観測点から時間差法のみで求める精度の高いアルゴリズムを開発した。AVONの国内観測網のデータから、落雷のピーク電流、およびエネルギーの指標となる電荷モーメント変化を高速で推定するアルゴリズムを開発することに成功した。3) 豪雨予測法の開発:東京学芸大学の中村真帆博士の協力を得て、落雷データから降雨との関係を自動判断し、落雷及び降雨その予測を行うための、ニュラルネットワークの手法について検討した。4) 雷放電と降水量の関係の解明: AVONによる国内落雷観測データとアメダス降雨データを比較した。その結果、関東地方の夏季に発生した積乱雲について、落雷頻度と降雨の間の高い相関を確認した。4km間隔の稠密観測では、負極性に帯電した降雨が水平方向に100mオーダーの細密構造を持つことを発見した。AVONで得られた東南アジア地域の雷放電情報と、気象衛星から得られた積乱雲との対応関係を調査し、落雷計測の精度について評価した。5)台風と雷放電の関係の解明:台風強度予測を行うアルゴリズムについて、3)で触れた新しい手法の適用可能性について検討した。6)鉛直風と雷放電の関係の解明:AVONによる国内落雷観測データと、アメダス、気象レーダー、さらに明星電気が展開している稠密観測網で得られたデータを比較し、レーダーで得られた雲面積、降雨、落雷頻度の間に明確な相関が存在するが、ダウンバースト直前に落雷数が減少することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示した6項目、すなわち、1) 観測網の整備・拡充、2) 落雷の解析法の改良、3) 豪雨予測法の開発、4) 雷放電と降水量の関係の解明、5)台風と雷放電の関係の解明、6)鉛直風と雷放電の関係の解明について、5)の台風に関する定量的解明がやや遅れ気味であるが、他の項目については概ね計画以上に進展がある。特に6)について雷放電とダウンバーストの関係を見出し、4)では降雨計測の新手法を開発するなど特段の進捗があった。
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今後の研究の推進方策 |
雷放電の多点稠密観測網を、気象観測網と連動した形で構築する(候補は高崎市付近)。また、ミャンマー、モンゴルなどのアジア地域への観測機器設置を進める。25年度までに開発したアルゴリズムの位置評定精度をさらに向上させると同時に、リアルタイム運用に向けた高速化を目指す。ニューラルネットワークあるいはそれに準ずるアルゴリズムを、雷放電及び気象データに適用し、それらの活動予測を行うプログラムを作成する。国内稠密観測網で得られたデータを解析し、降雨と落雷の関係を定量的に把握する。さらに、降雨領域の直前予測プログラムの開発に着手する。また、東南アジア地域の気象データとの比較検討を進める。ニューラルネットワークなどの手法をAVONで取得されるデータに適用し、台風強度の予測手法の開発を行う。鉛直風、降水、雷放電の定量的な関係を把握する。
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