研究課題/領域番号 |
24254004
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 滋穂 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (10135535)
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研究分担者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
原田 英典 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40512835)
NGUYEN P H LIEN 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (50547453)
酒井 彰 流通科学大学, 総合政策学部, 教授 (20299126)
河井 紘輔 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (10531501)
蛯江 美孝 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (90391078)
神保 有亮 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (30538434)
シバコティ ビナヤ 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, 研究員 (60599075)
KUNACHEVA C 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (70625839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水衛生環境 / アジア都市 / 水・物質フロー / 汚水処理技術 / 汚泥処理技術 |
研究概要 |
本研究では,適切な代替水利用・排水システムシナリオを提案・評価するモデルの開発を目指す。そのため(1)水衛生環境に関わる基礎情報・解析,(2)重点都市での詳細水環境調査,(3)水環境シナリオ評価モデルの構築と検証・利用,の3課題に分けて研究を展開する。 当該年度,(1)では,ハノイ,ダナン,フエ,クルナ,バンコクの5都市で,研究協力者との研究推進の調整を行い,現地訪問・踏査等の基礎調査を実施した。 (2)では,次年度以降の詳細調査計画を調整するとともに,ハノイではNhue-Day川流域の物質フロー(N・P)収支の構築を開始したとともに,Nhue川の水・汚濁収支の構築を進めた。結果,下水道が未整備な都市部のみならず,郊外農村部も水環境への汚濁負荷源となっていることが示唆された。また,同市における廃棄物フローの構築のため,インフォーマルセクターが回収・再資源化している有価物に着目し,特にプラスチック類の再資源化が労働集約的に行われているハノイ市内の地域において再資源化工程の物質フローを明らかにした。クルナにおいては,スラム地区での調査より,家庭レベルの水収支構築を開始したとともに,公衆トイレ利用実態,水源選択・貯留方法,および水源・貯留水の水質に関する予備調査を行った。その結果,貯留水の糞便汚染が深刻であり,共同トイレでは糞便水洗が励行されておらず,その一因には当地の水利用形態があることが示唆された。さらに,ダナンでは家庭系水需要予測,フエにおいては家庭レベルの水利用・健康リスク解析に向けた予備調査を行った。 (3)では,環境改善シナリオ構築のツール開発に向けた汚水処理技術の選択アルゴリズムと合わせ,汚泥処理システム選択アルゴリズム構築の基本フレームを作成した。汚泥収集技術や安定池,酸化池,人工湿地などの汚泥処理技術,コンポスト化や埋立等の処分技術について整理を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,アジア途上国都市で適用可能な,適切な水利用・排水システム評価手順を提案にむけ,その研究を(1)水衛生環境に関わる基礎情報・解析,(2)重点都市での詳細水環境調査,(3)水環境シナリオ評価モデルの構築と検証・利用,の3課題に分けて展開することを計画していた。 当該年度の目標としては,(1)は,重点都市,準重点都市の6都市で,研究協力者との研究推進の調整を行った後,現地訪問・踏査・公的機関インタビュー等の基礎調査を実施することとしていた。5都市においてその調整を行うことができ,おおむね順調に進展していると言える。 (2)は,重点都市での詳細水環境調査を行うこととしていた。ハノイでは物質収支・有価物フロー,クルナでのスラム内水衛生構造把握,ダナンでの水需要構造把握,フエでの家庭水利用・リスク解析に向けた予備調査に着手することができ,当初の計画以上に進展していると言える。 (3)では,モデル化に必要な技術情報を収集し,そのデータベースを作成することとしていた。これまでに構築しつつある環境改善シナリオ構築のツール開発に向けた汚水処理技術の選択アルゴリズムと合わせ,新たに汚泥処理システム選択アルゴリズム構築の基本フレームを作成し,その技術情報の収集を行っており,おおむね順調に進展していると言える。 以上より,本研究課題は当初目的に対しておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,アジア途上国都市で適用可能な,適切な水利用・排水システム評価手順を提案するもので,そのため(1)水衛生環境に関わる基礎情報・解析,(2)重点都市での詳細水環境調査,(3)水環境シナリオ評価モデルの構築と検証・利用,の3課題に分けて研究を展開する。 今年度は,昨年度の基本データ収集の準備を踏まえ,以下に中心を置く。(1)では,昨年度までに今後の研究推進方法について調整した5都市での現地訪問・踏査・公的機関インタビュー等による基礎調査の収集を進展させるとともに,新たな調査対象都市での調査実施に向けた調整を行う。 (2)では,昨年度4都市で予備調査結果を元に,詳細調査を開始する。ハノイでは,Nhue-Day川流域の複雑な河川網を考慮しながら,水・物質フロー図の作成を進めるとともに,水環境管理と密接に関係する廃棄物,特に有価物のフローの把握を進める。クルナでは,水源・著流水の糞便汚染が深刻であったことから,糞便の多様な伝搬経路を考慮した総体としてのリスクの定量化をめざす。とくに,発病頻度の高い子供たちをターゲットとし,リスク低減方策の提言に向けた病原性微生物感染リスク同定のための詳細データ収集を行う。ダナンでは,同地の水需要構造の把握を継続するとともに,フエでは,新たに上水道が普及した地域を対象に,水利用実態の変化についての調査を進める。 (3)では,昨年度に引き続き,最終的な水環境シナリオ評価モデルの構築に向け,技術情報の収集を進めるとともに,今後,技術を現地に適用する上での社会的制約条件についても地理的,文化的制約も含めて検討を進める。
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