研究課題
有肺類の右巻と左巻は、たとえ物理的に交尾が不可能であっても、母性効果で表現型が決まるため、同所的に生活する限り遺伝子プールを共有する。この間に多数派と交尾できない少数派の巻型は淘汰され、集団は単一の巻型に固定する。これに反するマレイマイマイ属の二型現象は古典的なパラドックスとして知られる。これまでに豊富に現存する野生集団の調査により、左右二型が積極的に共存し、不可能とされてきた対面・異型交尾(右巻×左巻)を容易に行うことをつきとめた。長期動態追跡を継続し、雨季10月に方形区の二型頻度を調査した。頻度1:1からの有意なずれが長期的な周期振動によるか否かを検証するために統計解析したところ、数年間の周期での振動がある可能性が示唆された。分子系統解析により、本属には、左右二型の種群から単型の種群が分岐し、集団の左右二型が系統進化的に安定な祖先形質であり、二型を維持する鍵形質が、異型交尾を可能にする交尾器(陰茎鞘)であることが示唆された。本属の交尾行動は計画的には観察できないため、継続的に行動を記録し、異型・同型交尾の成功率を探る微速度撮影システムを確立・改善した結果、求愛行動と定義される交尾前の行動ステップをほとんど行わずに交尾することが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
左右二型の頻度が周期的に振動するか否かを検証するには、世代時間から判断して最低でも10年を超える経年調査の継続とデータの蓄積が不可欠である。それだけに、本年度の調査結果を含めての統計解析により二型の頻度が振動している可能性を示すことができたのは大変に大きな成果である。さらに、自然状態でも飼育環境下でも、交尾行動を観察することはほとんど不可能であった本グループの交尾行動をくりかえし記録できるタイムラプス撮影システムにより、右巻どうし、左巻どうし、右巻×左巻の交尾行動を最初から最後まで追跡できるだけの動画記録を達成できた。以上の理由から、今後の大きな展開を約束する画期的な成果が得られたと結論できる。
本年度に得られた交尾行動の記録から判断して、従来想定されてきたよりもはるかに短い時間で、求愛行動に相当する儀式的な行動はほとんど行わずに、雌雄二役の正逆交尾を物理的に達成することが明らかである。本結果は、このような様式の交尾を右巻と左巻が対面し、試行錯誤せずに陰茎を相手に挿入するには、あらかじめ両者が相手の左右極性を認識していなくてはならないことを間接的に支持する。これにより、視覚では形を知ることができないカタツムリがいかにして相手の(交尾器の)左右極性を認識できるのかに答えることが大きな課題として浮上した。したがって、今後は、交尾する両者の物理的接触のステップと行動の変化を記録するために多方向から交尾行動を同時に撮影する手法を開発する。さらに全暗条件での撮影の被写界深度を上げるため赤外線照射の量と角度を改善する。
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