研究課題
本研究の目的は、マレイマイマイ属で、発生の鏡像型と実像型(左右二型)が持続的に共存するメカニズム、および巻貝一般に特徴的な鏡像進化(右巻⇔左巻)を抑制・促進する要因を検証することにある。同一集団の右巻と左巻は、たとえ交尾できなくても、遅滞遺伝ゆえにゲノムを共有し、同所的には種分化しない。むしろ、多数派と交尾できない少数派が淘汰され、集団は単一の巻型に固定する。この原理に反する二型現象は、古典的なパラドックスとして知られる。これまでに、東南アジアに広く分布する本属に着目し、豊富に現存する野生集団を発見し、二型が積極的に共存する事実をつきとめた。交尾様式から不可能とされてきた異型交尾(右巻×左巻)を本属が容易に行うことを発見した。その結果、それでは説明できない二型頻度の事例が発展問題として浮上した。本学術調査の主眼は、以上の経緯から導かれる左右性の生態機能を理解することにある。長期動態追跡を、雨季(5~10月)に方形区の二型頻度を調査し、頻度1:1からの有意なずれが長期的な周期振動によるかを検証した。その結果、頻度1:1は通常に観察される状態ではなく、ほぼ恒常的に右巻に有意に偏っている集団や左巻に偏っている集団があることが明らかとなった。頻度1:1の集団に、二型頻度の振動があれば、年により右巻に偏ったり左巻に偏ったりすることは理解できる。しかし、本二型現象の場合には、二型頻度の振動では説明できない状態で右巻あるいは左巻が多数派のまま維持されていることが明らかである。さらに長期動態調査の結果を数理解析することにより、いずれの集団にも頻度の振動がある可能性が示唆された。振動がありながら恒常的にどちらか一方の頻度が50%を有意に超えたまま維持され続ける事例はこれまでに類がない。振動が統計的に有意であるか否かを確証するには調査を継続する必要がある。
1: 当初の計画以上に進展している
遺伝的に決定されている発生の左右が反転した実像型と鏡像型の二型が共存するだけではなく、その頻度が1:1が恒常的にずれており、かつ一定の周期で振動していることの発見は、長期生態調査なしには検出ができないことである。これまでの研究成果からは予期されなかった一方の型が多数派で維持される周期的振動を示唆する結果は特筆すべき成果である。
左右二型が互いを選択して交尾する同類交配は左右二型の維持を説明できるが、1:1から恒常的にずれた二型の共存も頻度の振動も説明できない。これまでの交尾対の頻度解析から、単なる同類交配ではなく、頻度に依存した少数派に特有の交尾行動に起因する可能性が浮上しつつある。これは、直感的にはこれまでの常識に反する現象であるだけに、経験的アプローチおよび数理解析による理論的アプローチにより、証拠を積む研究を蓄積するだけの価値のある研究課題の摘出に成功し段階にある。以上の理由から長期生態調査と並行して交尾行動・生活史の追究を実験的に行う。
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