研究課題/領域番号 |
24255009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (10128308)
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研究分担者 |
宮部 貴子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (10437288)
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
古賀 章彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (80192574)
安波 道郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (80244127)
早川 敏之 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80418681)
松井 淳 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (70455476)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宿主寄生体関係 |
研究概要 |
平成24年度はタイ、マレーシア、インドネシア、台湾の研究機関と本研究課題の共同研究とその調査の依頼の会議を各当該国でおこなった。いずれの国とも共同研究・調査の実施が承諾された。現在、最終的な調査許可手続き、ならびに調査地の選定をおこなっている段階である。今年度おこなった予備的な研究成果は以下のとおりである。 (1)日本に輸入された個体や調査地で収集された血液サンプルを用いてサルレトロウイルス(SRV)4 型(SRV4)およびSRV5のELISAによる抗体検査、ならびにウイルスのDNAとRNAのPCRによる検出を試みた。カニクイザル44頭(フィリピン産、イナリサーチが輸入し飼育している)はELISA抗体検査陰性。PCR検査陰性。カニクイザル7頭(インドネシアのフィールドで採集した血液サンプル)において、ELISA抗体検査陰性、PCR検査陰性。ブタオザル13頭(インドネシアのフィールドで採集した血液サンプル)において、ELISA抗体検査陰性、PCR検査陰性。 (2)ニホンザルとカニクイザルの2種間に見られるSRVやサルマラリア原虫感染に対する感受性の差を、宿主感染抵抗因子の産生制御で説明できるかを検証するため、Millopore社Milliplex multiple cytokine assay kitをもちいて、パイロット的に23種のサイトカインの血漿中濃度の基礎値を各々2個体について測定した。測定項目の多くは2種間に差を認めなかったが、IFNγと、IL-17aは、より感染抵抗性を示すカニクイザルにおいて高値を示した(未発表)。 (3)テナガザルのexomeの解読を開始した。解析した個体は、シロテテナガザルのオス、アジルテナガザルのメス、ならびにフクロテナガザルのメスである。 (4)テナガザルから検出したヘリコバクターの分子系統解析をやり直し、新たなデータを追加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本研究課題の開始年度であるため、今後の調査協力を依頼することが主な取組であった。まずは、タイ、マレーシア、インドネシア、台湾を主調査地として、調査を開始する。その手筈が整いつつある。いずれの国からも共同研究の依頼に対して快諾が得られた。これら4カ国から調査を開始し、適宜他の国へも共同研究調査を広げていく。 SRVに関しては、今回既に調査方法を確立したので、現地調査の実施によってサンプル(糞、血液)を入手することで、研究の進捗を期待できる。マラリアならびにヘリコバクターの検出も、これまでの研究のなかで既に方法を確立している。例えば、テナガザルの血液からマラリアの、糞からヘリコバクターの特異的配列を検出し、系統解析をおこなった。すなわち、糞や血液から新たな感染個体やDNA配列を検出できれば、ただちに分子系統解析をおこなうことができる。以前からおこなっていた、テナガザルの生物地理学的な海外調査の経験が今回の課題にも有効に働くことが多く、ただちに調査および実験が開始できる状況にある。病原体の解析と並行して、宿主霊長類の免疫応答機構や分子進化の解析は、これまでにも遂行してきたので日本国内で宿主の解析をおこなう準備は万全である。 今年度調査依頼をお願いした各国とは既に共同研究協定書の覚書を取り交わしているところが多く、今後の調査が円滑におこなえる状況にある。上にも記したように、調査や実験手法もかなり確立しているので、平成24年度は初年度であるにも関わらず、今後の計画が立てやすく、おおむね順調に進展しているという達成度評価をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はタイ、マレーシア、インドネシア、台湾の4カ国を中心に調査を実施する。タイはタイ動物園協会、マレーシアは野生動物保護局、インドネシアはボゴール農科大学、ガジャマダ大学、バリ大学、および台湾はPingtung大学が協力機関である。実施にあたって、調査要員と手薄な研究項目の研究者を補充する意味で、2人の研究分担者を追加する。マラリア担当のRichard Culleton(長崎大学熱帯医学研究所)と蠕虫担当のAndrew Macintosh(京都大学霊長類研究所)である。調査対象国の共同研究者とは、既にサンプリング方法(糞採集)等の話し合いはできている。対応研究者が機会を見て、独自に試料収集を実施してくれる国もあり、試料がたまった時点で京都大学霊長類研究所に招聘し、共同研究として各種病原体の検出および解析をおこなう。試料を持ち出せない国に対しては、こちらから赴きそれぞれの国の研究機関で検出、解析を共同研究としておこなう。糞や血液からの検出はそれぞれ特異的な塩基配列に対応するプライマーを設計しており、PCRを用いて検出が可能となっている。検出できたサンプルについては、シーケンサーを用いて配列解析をおこない系統的な位置を決定する。SRV4ならびにSRV5は国内でニホンザルに血小板減少症を引き起こした系統の配列と比較し、両病原体のオリジンの検索をおこなう。その他の病原体は系統解析によって、生物地理学的な分析等をおこなう。病原体の解析と並行して、宿主の免疫応答機構や分子進化の解析を、サイトカインやレトロトランスポゾンやミトコンドリアを用いて、日本国内でおこなう。それらの準備は既にできている。
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