研究課題
ニホンザル血小板減少症の病原体であるSRV-4の感染おいて、宿主の病態多様性が観察される。ウイルス変異を塩基配列解析によって解析したとこと、ウイルスの変異と病態の関連性は観察されなかった。病態の多様性は宿主側の要因である可能性が示唆された。京都大学霊長類研究所内においてニホンザルの放飼場飼養群の中に原因不明の神経症状を呈する病気個体が観察された。発症個体のメタゲノム解析を行ったところ、ある種のウイルスが原因病原体である可能性が示唆された。マカク類に寄生するマラリアの特性を解析する方法として、宿主の糞サンプルから種や地域株を同定するPCR方法を開発した。ベトナムのマラリア寄生虫のタイピングを行ったところ、P. coatney, P.inui, P. cynomolgi, P. knowlesiの4種が確認できた。サルマラリア感受性のニホンザルとカニクイザルの2種間での相違は、サイトカイン応答に大きく依存している。これはToll様受容体TLR9 の機能的差異に起因していると想定される。両宿主種の少数個体での予備的検索から種間で固定しているTLR9アミノ酸置換を見いだした。マレーシア・サバ州において霊長類5種の糞サンプルを収集し寄生虫類の解析を実施中である。テナガザル類の属間交雑種の発声運動は単一の運動基盤に支えられているわけではなく、汎用的な運動発現と喉頭周辺に密接に結びついた運動基盤などの独立なメカニズムの上で実現されていることがあきらかとなった。タイのカニクイザルとアカゲザルの交雑地帯を観察し、カニクイザルのα雄個体の尻尾が長いほど、群れ個体の尻尾も長いことが明らかになった。今後季節繁殖性について解析を進める。CENP-B boxは、セントロメア形成に関与する主要素である。霊長類数種においてその所在が多様であるという結果を得たことから、本boxは塩基置換等の蓄積で独立に生じ得ることを示唆した。
3: やや遅れている
現地においてサンプルの収集は比較的ように実施できるが、サンプルを国外に持ち出すことが難しい場合が対象国おいて生じるので、日本国内で実施しなければならない実験解析が滞っている。現在交渉を進め、CITES等の手続きを完了させるべく遂行している。
ウイルス病に関してはニホンザル血小板減少症の病原体であるサルレトロウイルス4型(SRV-4)を中心に、海外での分布調査ならびに実験研究を進める。加えて、日本国内のニホンザル飼養個体に発生する原因不明の神経疾患においても、ウイルス感染が原因である可能性が明らかになったため、病態等との因果関係をさらに進める。マラリアに関しては人獣共通感染症の原因解明に向けた感受性の解析をすすめ、そのメカニズムを明らかにしていく。ヘリコバクター細菌に関しては、系統解析をさらに進めるとともに、ヒト・ヘリコバクターとマカク類ヘリコバクター(ニホンザルからHelocobactor macacae, H. heilmannii, H. pylori, H. suis, H. fennelliae, およびタイワンザルからH. cinaediの塩基配列が検出されている。)の実験的解析をすすめ、ヒト・ヘリコバクター感染ならびに発ガンモデルの可能性を推測する。宿主であるアジア霊長類は、行動特性、ゲノム特性、細胞特性等の広範囲な観点から宿主の進化と病原体の感染機構との関係を明らかにしていく。最終年度として、これらの成果を総合的にまとめる。
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/molecular_biology/member/hirai.html