研究課題/領域番号 |
24255016
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福代 康夫 東京大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70095511)
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研究分担者 |
岩滝 光儀 山形大学, 理学部, 准教授 (50423645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シガテラ / 有毒渦鞭毛藻類 / 食中毒 / 東南アジア / 国際研究者交流 / ベトナム / タイ / フィリピン |
研究概要 |
西太平洋海域における、底生性微細藻類の生産する毒による魚貝類食中毒の発生状況を、UNESCO/IOC/WESTPACのHAB及びTMO事業に参加している各国研究者に対する聞き取り調査によって調べた。その結果、中国とフィリピンにおいてシガテラ中毒が多く発生しているようであったが、化学的毒成分分析がなされておらず、症状の確認も曖昧であったため、シガテラと確認するに至らなかった。また、その他東南アジア諸国においてシガテラ中毒といわれている中毒事例も症状や原因毒の確認が不十分で、科学的にはきわめて不正確な状態でシガテラが頻発していると言われていることがわかった。同時に、地域により、死亡例の発生頻度や温度感覚の逆転などの典型的症状のある頻度が異なることも分かり、原因魚類に含まれる毒成分とそれらをもたらす有毒渦鞭毛藻の組成が地域によりの異なることも強く示唆された。 そこで、主要な有毒底生性渦鞭毛藻のGambierdiscusとOstreopsis、特に後者に焦点を絞り、千葉、神奈川、沖縄、ベトナムから海藻や海底の死サンゴ塊の表面に付着する生物の試料を採取し、そこに生える種の培養を試みた。培養株のできたものには携帯観察と遺伝子解析を行った。その結果、Gambierdiscusは培養株が作成できなかったものの、OstreopsisはO.ovata、O. lenticularisおよび未記載と思われる種を確認することができた。特に、沖縄の試料はO. ovataとO.lenticularisの原記載地から採取したもので、原記載と酷似した形態を示すものが得られ、後模式標本となりうるものと考えられた。 これらのrRNAのD8-D10領域を配列を解析し、既往の知見と比較したところ、欧州産のものおよび国内で得られている個体とは異なる配列を示し、今後より詳細に分析を行う必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的とした有毒渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusの原記載地であるタヒチ諸島のガンビエール島における調査は、現地の研究所の組織改革とおよびガンビエール島の政情不安のため協力困難という連絡があり、調査の安全を考慮して取りやめた。しかし、現地の状況が安定した場合には、今年度でも実施したいと考えている。また、インド洋のモーリシャスから調査依頼がきたが、こちらも現地に政情不安があり、自年度以降に可能性を探ることとなった。そこで、今年度は東南アジアと日本に調査地を絞り、シガテラならびにそれに酷似する、魚類による中毒発生と原因魚類に関する情報の収集に力を注ぎ、研究者ネットワークを作った。また、各地から生物の固定試料を集め、その形態および分子遺伝学的特性を調べるための技術を標準化することができた。さらに培養株の毒成分の分析も一部行え、沖縄産O.ovataからオバトキシンが確認することもできたのは予想以上の進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各種底生性渦鞭毛藻類の原記載地における試料収集に努め、GambierdiscusとOstreopsisにおいては、混乱している分類同定に資する基準データを収集するようにする。また、その過程で集められる各地の培養株の毒性分析を中央水産研究所の鈴木博士などの協力で行える目処がたった。そこで今後は、種を確定し得た株の生理生態学、毒化学的特性を1種づつ確認しうるように研究を進めたい。 来年度はOsteropsis属の基準種となっているO.siamensisを東南アジア研究者と共同で原記載地のタイ湾に最終に赴き、株の確立と特性解析を行って、同種の東南アジアにおける分布を確認したい。また、今年度に確認し得たO.ovataについても東南アジアにおける分布を調べることを同時に進めたいと考えている。
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