研究課題/領域番号 |
24300004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片桐 孝洋 東京大学, 情報基盤センター, 准教授 (40345434)
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研究分担者 |
田中 輝雄 工学院大学, 情報工学部, 教授 (90622837)
黒田 久泰 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (60323507)
岩下 武史 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (30324685)
佐藤 雅彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80455211)
大島 聡史 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (40570081)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自動チューニング / 実行時最適化 / Xabclib / OpenATLib / 疎行列反復解法 / エクサスケールコンピューティング / ハイブリッドMPI / OpenFOAM |
研究概要 |
疎行列反復解法ライブラリにおいて、エクサスケール環境に適用できる実行時自動チューニング(AT)技術の方式開発を、以下のグループごとに研究を進めた。 <AT方式開発グループ>では、疎行列反復解法ライブラリXabclibのMPI並列化のための基本設計を行った。疎行列の格納形式をAT手法により疎行列ベクトル積(SpMV)の効率化を行い、格納形式を自動選択するアルゴリズムを実装した。部分行列での最適な格納形式の推測性能を実験し、行方向で作るか列方向で作るかにより格納効率に差が出ることを明らかにした。この結果を基に、格納形式をATするアルゴリズムを実装し、反復法を用いたSpMV演算で他手法との比較を行った。また、AT用のフィッティング関数d-Splineを、情報量基準ABICを用いて2相問題および制約つき問題へ拡張した。 <数値計算ライブラリ適用グループ>では、GPU向けのSpMV実装を継続するとともに、メニーコアプロセッサなど他のアーキテクチャとの性能比較も実施した。特にCRS形式のSpMVについて、多くの性能評価を行った。東大のスパコンを用いて、大規模なSpMVを行うライブラリ開発を行い、かつ性能評価を行った。また、Xabclibをオープンソースの数値流体力学コードOpenFOAMのソルバ部に適用し、ATの有効性を評価した。 <アプリケーション適用グループ>では、有限要素解析や差分解析で広く用いられているICCG法について、メニーコアプロセッサやマルチコアプロセッサが有するSIMD演算を有効活用する実装手法について研究を行った。係数行列をブロック化し、不完全コレスキー分解においてブロック内のフィルインを許可するICCG(B)法を考案した。また、陰的時間積分法を用いた3次元線形MHDコードの開発を進めた。128×64×128のメッシュを用いて、ヘリカルプラズマ中での線形MHD不安定性の線形成長率および固有関数を評価し、陽的時間積分法コードで得られる計算結果との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主目的は、AT機能付き数値計算ライブラリXabclibにおいて、エクサスケールコンピューティングに向けたハイブリッドMPI実行を行うためのMPI実装をすることであった。残念ながら、本年度中にMPI実装したXabclibを公開することはできなかった。しかし、MPI実装のための基本設計を行うことができた。また、疎行列反復解法ソルバで必要なSpMVに対し、様々な角度から実装と性能評価の研究がされた。さらに、SpMVのATに必要な要素技術が研究された。また、アプリケーション適用においても、多様な計算機アーキテクチャで性能評価をすることができた。したがって研究全体を鑑みると、おおむね順調に研究が遂行できたといえる。なお来年度の前半にはMPI実装を行う予定であり、来年度中にはフリーコードとして公開予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度中にXabclibのMPI実装(プロトタイピング)を行い、フリーコードと して公開する。MPI実装してハイブリッドMPI化されたXabclibの性能評価を行うことが主要な研究となる。加えて、開発したXabclibを、OpenFORMなどの既存のフリーソフトウェアへの適用、および、アプリケーションへ適用評価を行う。このことで、エクサスケールの計算機におけるXabclibの利用に向けて、実用的なAT方式を開発することを目指す。
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