研究課題/領域番号 |
24300018
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
浅井 秀樹 静岡大学, 工学部, 教授 (40175823)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 革新的解析手法 / 高速伝送回路設計 / 多並列CAEシステム / シミュレーション工学 / パワー・インテグリティ / シグナル・インテグリティ |
研究概要 |
電子システムの高密度化、高速化が著しく進んだ結果、設計段階で、高速伝送信号の振る舞いの正確な把握が重要となってきた。一方で、大規模な物理現象解明のための多並列シミュレーション技術が注目されている。本研究課題では、大規模集積化システムの設計に向け、大規模混合領域に対応可能な多並列指向型の高速伝送信号CAE (Computer-Aided Engineering)システムの構築を目的とする。この超高速CAEシステムを、これまでに提案してきた革新的な独自の多並列指向型解析アルゴリズムに対して、さらに、非線形能動回路の解析機能、マルチレート性利用技術、マクロモデル合成機能を統合化し、それを多並列計算システム上に実装する。最終的に、世界最高性能の高速伝送信号CAEシステムの構築に挑戦する。 初年度は、ブロック型蛙跳び手法に対して、非線形能動回路に対応できるアルゴリズムへと改良した。非線形能動回路解析への適用のために、アルゴリズムを抜本的に改変した。線形回路解析では、蛙跳び手法に基づき、陽的代入計算により時間的前進をするのに対して、非線形回路解析では、蛙跳び手法の一時刻毎に非線形方程式を解くことが必要となる。トランジスタ素子のような三端子素子に対しては、必然的に非線形連立方程式の解法が必要となるが、元来、一状態変数ずつの解析を基本とする蛙跳び手法では、効率が大幅に低下し、本来の蛙跳び手法の優位性を維持できない。そこで、本研究では、多端子素子を非線形部分回路に対応するブロック内に含ませることで、一般性を失うこと無しにブロック型蛙跳び手法の適用を可能とした。非線形ブロックの解析には、部分回路に対して局所的陰解法の考え方が活用できる。すなわち、非線形ブロック毎のニュートン法を利用し、結果として、高速な解析が実現可能となった。 従来の蛙跳び手法による解析では、解析時の時間刻み幅を常に一定としていた。通常、トランジスタ回路では、そのスイッチング速度が素子毎、或いは、部分回路毎に異なることが知られている。そこで、計算には各電子回路素子・回路ブロックの時定数に適応した可変時間刻みを導入(マルチレート技法)し、計算処理の高速・効率化が実現できることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で、初年度は、(1)ブロック型蛙跳びアルゴリズムへの非線形能動回路対応技術の組み込み、(2)マルチレート技法の組み込みを計画し、(1)については、その実装までを(2)については、原理を検証するところまで達成した。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、順調に進展した。2年目においては、PCクラスタマシン上での並列分散型処理、および、GPUによる単独PC内での高並列処理による高性能化を目指す。当初の予定に変更は無く、粛々と計画を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度において、個別テーマに関する幾つかの成果があり、それらを対外発表する予定である。本年12月には、本研究課題に合致した国際会議(EDAPS2013)を本研究課題の代表者が主催予定であり、初年度からの繰り越し金を含め、有効活用する形で、本研究室からの多くの大学院生による発表を計画している。
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