車々間・路車間通信で安全運転を支援する協調型ITSに関して,もともと欧米では,日本で利用可能な帯域の7~8倍の広帯域な無線通信が利用可能であり,これを前提に欧米のネットワークアーキテクチャが設計されているため,現状ではそのまま設計・実施することができない.そこで,欧米のアーキテクチャの本質的な目的である位置透過性を論理的に実現しつつ,日本の実情である狭帯域通信に適したITSネットワークアーキテクチャを構築することが本研究の目的である. 当初は日本の実情に合わせたアーキテクチャであったが,欧州および米国で利用している無線通信の帯域が免許不要のWiFiと共用で信頼性が確保できず,欧米でも携帯電話網との併用が検討され始めた. 本研究ではもともとから車々間通信と携帯電話網を併用した効率的なサービスを適応することで,既存手法におけるオーバヘッドの抑制を行うことができ,シミュレータ評価により,既存手法と比較して送信パケット数の削減とパケット到達率の向上が確認できた. 通信方式に関して,複数アンテナを用いた無線通信システムでは,アンテナ同士の干渉や高速移動で生じる雑音によって,信号に誤りが発生するために誤り訂正符号を付加する必要がある.エルゴード性MIMO通信路のための多元並列連接符号を提案し,通信路環境が変化しても柔軟に対応することが可能であり,提案符号が理論限界に近い復号性能を得られることを理論解析で示した. 京都スマートシティエキスポにおいて,複数の自動運転車両に2種類の通信機能を搭載し,クラウドにデータを集約するシステムを構築し実証実験を実施した.また,本研究成果の一部となる複数の無線を利用したネットワーク技術は国際標準化機構ISOの国際標準(ISO/DIS 24102-6 ITS station management - Part 6: Path and flow management)として2016年3月に承認された.
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