本研究では、災害時などにおいてモバイル端末のみで一時的に構成されるアドホックネットワークを想定し、救助員などの複数のユーザが協調作業を行う場合のデータアクセスの支援を目的とした技術開発を行った。特に、想定環境において頻繁に実行されるTop-k検索(条件に合致する上位k個のデータの取得)やk最近傍検索(指定地点に最も近いユーザの情報やデータの取得)などの高度な検索を効率的に実行するための技法を確立した。 最終年度の平成26年度は、これまでの研究をさらに発展させ、アドホックネットワーク上のTop-k検索のためのメッセージルーティング手法を拡張した。具体的には、モバイル端末が非常に激しく動く環境において、平成25年度までの考案手法の性能が劣化することを考慮し、モバイル端末のクラスタリングに基づく、端末に移動に対して頑強なルーティング手法を考案した。さらに、複数の属性から構成される多次元データに対して、個々のユーザが異なる条件を指定するような複雑なTop-k検索を想定し、効率的なメッセージルーティング手法を考案した。 上記の研究を推進した上で、さらに余裕があったため、Top-k検索やk最近傍検索以外の高度な検索方法についても研究開発を行った。具体的には、ネットワークを構成する全端末を包含するエリア(凸多角形)を求める凸包検索、モバイル端末が収集したセンサデータ値の地理的な境界を発見する境界線検索、位置に関連する情報を配布する位置情報サービスなどに対して、効率的な処理手法を考案した。 これらの研究の結果は、国際論文誌やモバイル環境におけるデータ管理分野で著名な国際会議録に複数の論文が掲載されるなど、学術的に非常に大きな成果を達成した。
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