研究課題/領域番号 |
24300041
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
前川 聡 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 非常勤研究員 (60358893)
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研究分担者 |
仁田 功一 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (20379340)
陶山 史朗 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70457331)
山本 裕紹 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284315)
宮崎 大介 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60264800)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロミラーアレイ / DCRA / 位相変調 / 後退波 / ガウスビーム分解法 / デコンボリューション / X線リソグラフィ |
研究実績の概要 |
DCRA(Dihedral Corner Reflector Array)は、マイクロミラーによる反射を用いて光線を面対称変換して鏡映像の実像を結像する。これを屈折の原理によって実現する場合には、屈折率が-1 となるメタマテリアルを必要とし、結像空間において位相速度が-c である後退波となる。後退波への変換は、DCRAのような薄い平板状の受動的変換面では実現できず、結果としてDCRAに位相変調を導入したとしても、ミクロな点光源の移動に対する結像点の移動は面対称とはならず、実用的な範囲での高解像度化は不可能であることが明らかになった。そこで、DCRAをカスケードに2段使用することで、後退波空間から前進波空間に戻し、この空間において位相を揃えることで高解像度化することを試みた。光学シミュレーションソフト上でガウスビーム分解法を用いたが、光線があり得ない方向に現れたためソフトの仕様確認を行ったところ、ガウスビーム分解を行う分解面におけるサンプリングに問題があることが判明し、それを回避するプログラム開発を実施した。 また、位相変調での高解像度化が当初想定よりも困難であることから、他の手法の利用についても検討を行った。DCRAによる像において、ボケを補正することを目的として、画像の投影のおける表示像に対してあらかじめデコンボリューションを行う手法を提案し、その評価実験を行った。その結果フィルタリングを行わない元画像のままで空中像を形成した場合に比べて、事前補正画像の空中像方が細部の構造を確認できることが確認できた。 さらに位相変調機構の実装のために、2次元面での自由設計が可能なX線リソグラフィによる微細加工手法の検討を行い、結像が確認出来る程度の加工精度を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
DCRA単体での位相変調による高解像度化を目指していたが、本来波動限界による結像を行うには後退波が必要な領域となるため、点像の高解像度化にとどまり、実用的な範囲での高解像度化が不可能であった。そのため、DCRAをカスケードに2段使用することを試みた。しかしながら、ガウスビーム分解法を利用して回折・干渉を考慮した光学シミュレーションを行ったところ、光線があり得ない方向に現れるという予期しなかった現象が現れたため、バグ解析を実施して光学シミュレーションソフトの仕様を確認したところ、ガウスビーム分解法の再構成面におけるサンプリング手法に問題があることが判明した。本問題については、プログラム上で回避することが可能となったが、計算量の問題が残っており、引き続き対策が必要となっている。 デコンボリューションによる高解像度化については、原理的な検証を行い、シミュレーションによって高解像度化の可能性について確認ができた。 X線リソグラフィについては、兵庫県立大学の放射光施設であるニュースバルのBL2を用いて実施した。加工精度に問題を与える要因である露光中の温度変化等に対して対策を施し、さらに現像で問題が出にくいホールタイプのDCRAを作成することで結像を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
位相変調による高解像度化については、引き続きDCRAのカスケード2段使用についてのシミュレーションを進めていく。2段使用の結果、計算量が問題になっている。直接的には、第1のDCRAおよび第2のDCRAの各開口の全ての組み合わせについての計算が必要となるが、中間点における結像を利用してここでガウスビームの再構成を行うことで第1のDCRAの記憶を消去し、計算量の削減を試みる。 デコンボリューションによる高解像度化については、人間の眼による直接観察を前提として、PSFを実際の光学系において計測し、これを基にしてフィルターの設計を行って表示画像にあらかじめ逆フィルターをかけておくことで効果を確認する。 X線リソグラフィについては、現時点ではまだ精度的に十分とはいえないため、より高精度の加工を目指す。新たな光学系の導入によって平行光の出射が可能となったニュースバルBL11の使用も検討していく。これまで使用していたBL2は扇形に広がる放射光であったため、露光・現像が理想的に出来た場合においても、必ず角度誤差が生じるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年8月、光学シミュレーション開発の途中、光線があり得ない方向に現れるという予期しなかった現象が見られたため、バグ解析を実施、光学シミュレーターソフトの使用確認を行ったところ、波動解析の近似手法であるガウスビーム分解を行う再構成面におけるサンプリングに問題があることが判明し、さらにその仕様に対応したソフト開発を行う必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
X線リソグラフィを用いてシミュレーションによる設計を反映した光学素子の試作を行う。これまでの扇形のビームを利用したBL2に加えて、平行光の露光が可能なニュースバルBL11の利用についても検討する。研究分担者が広域に渡るため、適宜打ち合わせを実施するために旅費を必要とする。
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