研究課題
映画・テレビジョン・テレビゲームの3D化が急速に進んでいる.しかし,人工的な立体視が人間に与える生理的・心理的影響やその効果については未だ十分明らかにされておらず,生体安全性を担保するための国際的ガイドラインも策定途上にある.そこで本研究では,主観的評価や自律神経系指標などの客観的評価の両方に基づき,主に「3D酔い」を対象として,1)人工的な立体視によって生じる3D酔いの発症条件の解明,2) 3D酔いの原因が映像酔いと不自然な立体視による眼精疲労の相乗効果に関係するという仮説の検証,3)3D酔いを予測するモデルの構築とその危険度の定量的な算出方法の開発,4)3D表示が人間に与える臨場感の客観的評価方法の開発を目的とする.本年度では,昨年に続いて3D酔いの原因の一つとされている垂直視差を対象とした.すなわち,人工的な立体視では,適切な左右両眼視差は頭部が垂直で両眼が水平であることを前提としているが,実際の視聴では必ずしもこの条件が成り立たず,立体視を妨げる垂直視差が発生する.この垂直視差により眼精疲労や3D酔いが発生する可能性がある.そこで本研究では,視力に異常のない学生12人に対し,テレビジョンを実際に45度傾けた状態で3D映像を視聴させ,視聴前後においてアンケート(SSQ)とフリッカ周波数を測定することにより垂直視差の生体影響を評価した.なお,対照実験として,2D映像を傾けない場合,2D映像を傾けた場合,さらに3D映像を傾けない場合についても同様の評価を行った.実験結果より,SSQについては,垂直視差を含む映像を視聴した場合において顕著にスコアが上昇する傾向にあった.またフリッカ周波数は垂直視差を含む映像を視聴した場合において有意に低下することが明らかになった.以上から,人工的立体視による生体影響を避けるためには,垂直視差を取り除く必要があることが示唆された.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Medical Engineering and Physics
巻: 37 ページ: 1146-1151
doi:10.1016/j.medengphy.2015.09.008