研究課題/領域番号 |
24300043
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
星野 准一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40313556)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エンタテインメントコンピューティング |
研究概要 |
1)エンタテインメント・サービスシステムの構築手法としては、ユーザ属性、対象属性、制作レシピなどをカプセル化した体験ユニットの構成法を明らかにした。ユーザの目的に合わせた作品の検索・推薦や、体験ユニットの複合化によりカスタマイズするなど、生産・流通・体験を通して一貫して利用する。これにより、難易度や制作時間を見積もったり、関連する制作手法を検索したり、初心者が自習しながら制作を進めることが容易になる。また、完成したコンテンツのメタデータとして利用することで、ユーザからの検索要求に応じて提示したり関連コンテンツを推薦することもできる。 2)認知科学分野のアニマシー知覚の知見を参考に、生命的に見える仮想生物シミュレータを構築して評価を行った。認知実験により、2段階確率モデルにより突発性と多様性を考慮に入れた動きを生成することで、人から見たときに生き物らしく見えることを確認した。 3)多数キャラクタを利用した歴史学習ゲームシステムを開発して予備実験を行った。江戸の街を題材にして、江戸の文化や生活習慣を学ぶことができるコンテンツを作成した。テキストによる学習と比較した場合の理解度の比較を行い、キャラクタの表現力などの改善項目を抽出した。 4)政府や地方自治体による、政府ガイドラインを参照して問題作成を行う災害ゲームシステムの開発を行った。予備実験で、ガイドラインを見ながら問題を作成して貰ったところ、問題作成の質の向上を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・本研究では、知能キャラクタ技術を利用したエンタテインメント・サービスシステムの開発と評価を目的としている。これまで、問題設定、コンセプト設計、プロトタイプ開発、評価などの開発プロセスの整理や、エンタテインメント性の構成要素の分析を行ってきている。本期間では、体験ユニットの概念を導入することで、ユーザから見たときの体験内容と、システムの機能を一致させるとともに、階層的なシステム機能の表現を容易にすることができた。 ・人の感性・認知を反映させたシステム設計法として、認知的クロノエスノグラフィ法の適用を検討した。評価実験のために、子供による国語の教科書などの音読を支援するエンタテインメントロボットの基本設計と部分試作を行った。子供から見て、親しみがあり、音読を聞いて貰っている感覚を創出するための反応や表情変化を行う機能を実現して、子供の注意配分などの実験を行うための実験計画を立案した。 ・高齢者のリハビリ支援を行うための五指と四指の運動を連続的に計測することができるゲームコントローラを企業と共同で開発した。予備的な評価として、国際福祉機器展に展示を行い、来館した高齢者に意見を伺った。商品化に向けてデザイン性も考慮に入れてプロトタイプの設計を行った。
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今後の研究の推進方策 |
・ユーザ体験の構造化について、適切な分割法や構成方法について研究を深める。体験ユニットのデータを増やすとともに、マネージメントするための基盤ソフトウェアの開発を進める。試験的に本研究で取り組んでいる3Dキャラクタやロボットのモジュールの制作方法などを記載して、事例ベースの開発支援の有効性を検証する。また、深いユーザのモデル化を行う手法として、認知傾向、行動傾向、好んで利用する体験モジュールなどの関連性の分析を進める。 ・人の感性・認知を反映させたエンタテインメントの設計法については、読書介助ロボットを題材として、ユーザの音読状態や注意配分などの計測に基づいて、ロボットの有無での比較実験を行う。これにより、ロボットのどのような反応に注目しているかを把握して、ロボットの改善につなげるプロセスを構築する。 ・高齢者のリハビリ支援を行うためのゲームコントローラの商品化による一般ユーザの利用実験を進める。五指の運動特性や、腕の動きの範囲などをロバストに推定する信号処理手法を利用して、実データを利用してリハビリ運動プランの改善などにどのように有効活用されるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題では、エンタテインメント・サービスシステムの基盤ソフトウェアとサービス提供事例を開発するとともに、想定しているユーザにより利用実験を行い、エンタテインメント性の分析や、ユーザのライフスタイルの変化などの社会的影響を測定することを目的としている。そのため、最終年度に評価用コンテンツの制作やソフトウェア開発が発生する。 読書介助ロボット、歴史学習ゲームシステム、趣味によるワークライフバランス支援などのシステムの、ユーザ評価のためのコンテンツ制作やソフトウェア開発、データ分析のための人件費などに利用する。
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